風化造礁サンゴ、泡盛粕など島の資源を活用
琉球の美しい海に眠る風化造礁サンゴ。このサンゴは浅瀬に生息、枯れて白砂のようになって海底に溜まったものだが、㈱沖坤はこれを「サンゴの建材」として加工することに成功した。
比嘉卓也社長(39歳)は「風化造礁サンゴのほか、隆起によって形成された琉球石灰岩、廃棄される赤瓦などを地域資源として捉え、製品づくりに生かしたいと考えた」と話す。そんな同社の主力事業は道路の側溝(U字溝)やパーキングブロックといったプレキャスト製品の製造・販売で、その売上高が全体の6割以上を占めている。建築用の内外装材や公園にある赤瓦の東屋、ベンチといった身近な製品のほか、高層ビルに使われる超高強度コンクリートなども手掛けている。その技術力の高さは折り紙つきだ。
なかでも「サンゴの建材」のうち内装材の「サンゴの塗り壁」は2022年のグッドデザイン賞を受賞したほどの逸品で、沖坤ブランドとして人気商品に。「枯れたサンゴにも微細な空孔があり、においや湿気の吸着除去に効果を発揮する。シックハウス症候群の原因物質とされるホルムアルデヒドを吸収分解する効果も確認済みだ」と比嘉社長は強調する。塗り壁の製品ラインアップは赤瓦を混ぜた桃色の「琉球赤瓦」、大理石を配合した白い「勝連トラバーチン」など数種あり、その技術は擬石タイルなどに活用されているという。
そのほか、同社では泡盛の粕を固化させる技術を産学連携で研究し、魚の棲家とる魚礁を開発。サンゴ増殖基盤材にも応用し、サンゴの養殖を支援する活動に収益の一部を寄付している。「藻場を再生し、美ら島の景観を守り、海洋や漁場環境の改善、サンゴの好循環を生み出したい」と比嘉社長は話す。
汚泥を雑草繁殖抑制に活用
こうした取り組みの傍ら、同社が今、力を入れているのが「防草材」の開発だ。生コン工場やミキサー車洗浄時に生じる有害な六価クロムを含むスラッジ(汚泥)を無害化したもので、名護市内の県道や市道の緑地帯での実証実験の結果を受け、今後、那覇空港線など県道5カ所の緑地帯での試験活用が始まる予定だ。
本格生産は2~3年後の見通しだという。「いずれは本土にも製造ノウハウを提供できるようにしたい」とし、「10年後には売上高に占める防草材を含むスラッジ無害化関連製品事業の構成比を10%に高めたい」と比嘉社長。そして、そのためにも「できることを確実に、一歩ずつ、つづけていきたい」と力を込める。
(株)沖坤
沖縄県名護市字久志521番地6 TEL:0980-55-2231
設立:1973年 従業員:約30名 資本金:3000万
HP:https://www.okikon.com/
砂川雅美さん
(公財)沖縄県産業振興公社産業振興部
産業振興課 課長
沖縄において、かぎられた資源の有効活用は事業継続に欠かせない視点です。㈱沖坤は持続可能な社会に貢献するという理念を掲げ、独自技術を生かし、本県の産業課題を解決する製品を開発しています。たとえば、当公社が伴走支援を行う沖縄県産業振興基金事業に採択され、汚泥を無害化し雑草繁殖を抑制する防草材を開発しました。当公社としては今後もフォローを継続し、同社が地域や産業振興に波及する事業を展開することに期待しています。
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