難燃ゴム製造のあらたな分野に挑戦

700度の高温に溶けたアルミの溶湯をゴムシートの上に垂らすと、溶湯がはじかれるようにシートの上を流れ落ちていった。これは長野県茅野市に本社がある高島産業㈱(小口武男社長)がYouTubeで公開している自社製難燃ゴムの実験映像。比較するために置かれた耐熱ガラス製のクロスにはアルミ溶湯がべったり付着しているがLFゴムにはその痕跡すらなかった。

特殊なこのゴムが溶湯アルミをはじく仕組みはこうだ。ゴムのなかには水分を含侵させた無機材料が含まれており、高温のアルミに触れることでその水が水蒸気の膜をつくってゴムを保護するというのだ。これはライデンフロスト現象と呼ばれ、その頭文字を取ってLFゴムと名付けられた。

高島産業は2022年、このゴムを開発した㈱アトムワーク(福岡県北九州市)から特許の独占的使用権を取得。以来、小型加工機「マルチプロ」につぐ、自社ブランド製造を目指すことになった。

前身は終戦直前の1945年3月に設立された高島航空兵器㈱。信州では古くからみそや日本酒の製造に必要な気密性の高い木製たるが作られており、その技術を生かした木製の飛行機燃料補助タンクを製造していた。終戦後、高島産業として再スタートし、諏訪地域の時計メーカーがつくる柱時計の木枠の受注生産をはじめた。その後、時計の金属部品や精密部品、医療機器部品の加工などを手掛け実績を積み、念願のオリジナル商品づくりに乗り出した。

LFゴムの難燃性を紹介したYouTube動画の一部。LFゴム(手前)に落とした高温のアルミがへばりつかず、玉状になって流れている
小型加工機「マルチプロ」

展示会へ積極出展、販路を広げる

LFゴムの汎用性の高さに注目したのが、専務で開発部長の小口陽平氏。だが、金属加工が専門の会社にとって、ゴムの製造は未知の世界だった。22年秋から2カ月間、開発部門の社員ふたりが前出のアトムワーク社に赴き、製造方法を学んだ。プロジェクトリーダーの小林修氏(59歳)は「LFゴムには、いったん蒸発した水分を、空気中から取り込んで補充する潮解性物質が含まれている。この特殊な物質を製造過程でゴムのなかに均等に分散させるには職人技が求められた」と振り返る。

難燃性が高いLFゴムは、鋳造や製鉄メーカーの生産工場で飛散する高温の金属から、作業員や生産ラインの設備を守る、エプロンやシート、パイプの保護材などとして使われる。高島産業では販路を広げようと、24年度からは、自動車や防衛産業の展示会、鋳造関連学会の展示会などにも出展。これまで扱かったことのない業界からも注文がくるようになったという。小林氏は「溶融金属を扱う生産現場の安全に寄与できる製品なのでやりがいがある」と話している。

LF ゴムの生産導入に係わった中心メンバー。専務で開発部長の小口陽平さん、土屋淳さん、小林修さん(左から)。
小口武男社長

垣内健児さん
長野県産業振興機構
諏訪センター長

高島産業がいま力を入れているLFゴムは、ライデンフロスト効果というあらたな機能を備えた、ケタ外れに燃えにくいゴムです。県内にも多くの中小鋳造メーカーがあるので、製造現場でこのゴムが使われれば、作業員の安全と労働環境の改善につながります。精密加工が専門の高島産業が他の会社ができない、新機軸の製品に目を付け挑戦するのは、積極経営の現れです。製品の機能性と安全性に自信があるからできることだと思います。