高知県南西部を走る「四万十くろしおライン」(窪川‒中村を結ぶ中村線、宿毛‒中村を結ぶ宿毛線の総称)、そして県南東部の後免‒奈半利を結ぶ「ごめん・なはり線」(正式名称は阿佐線)の3路線で鉄道事業を展開している土佐くろしお鉄道㈱。同社は高知県と沿線18市町村で株式の9割以上を保有する第三セクター方式の鉄道会社(金谷正文社長)である。
同社総務課の北川典生係長によると「各地のローカル線のなかでも、当社の路線は生活路線として地元住民に親しまれているだけでなく、個性的な車両、四万十川や里山、土佐湾、太平洋の黒潮を臨む車窓風景などのおかげで観光客からも人気を集めている」という。

 

四万十くろしおラインの中心駅、中村駅舎。土佐くろしお鉄道の本社は中村駅舎に ある
2010年にリノベーションされた築40年の中村駅。改札口を撤去し、ホーム の一部を待合スペースに。壁や机、椅子には最高級の四万十ヒノキを使用。2010年のグッ ドデザイン賞を受賞した

その中核を担うのが「四万十くろしおライン」(中村線・宿毛線)だ。このラインは四万十川へのアクセスポイントである中村駅を中心として、西方向にある宿毛駅と東方向にある窪川駅の間の22駅を結ぶ66・6㌔㍍の路線。その歴史は古く、中村駅は1970年に当時の国鉄中村線の終着駅として開設され、87年の国鉄民営化でJR四国に移管、その翌年に土佐くろしお鉄道が引き継いだという。「廃線の危機にあった中村線を存続させるために、県をはじめ沿線自治体、金融機関、民間企業・団体が一体となって第三セクターを設立し、県民の生活、産業、経済、文化の振興、地域活性化になくてはならない路線として守りつづけてきた」と北川係長は話す。
ちなみに現在、「四万十くろしおライン」ではJR土讃線・予讃線との相互乗り入れを実施しているほか、高知‒中村・宿毛間の直通運転(1日9往復)のうち4往復(3月のダイヤ改正以降)に関しては20年8月から「新型車両2700系」を導入しているという。「新型車両にはフリーWi -Fiや座席コンセント、多機能トイレが配備されており、利便性が格段に向上した。10年にリノベーションした中村駅も見ごたえがあるので、あわせて楽しんでほしい」と北川係長は話す。
もちろん、もう一方の「ごめん・なはり線」についても話題に事欠かない。同線は日本最後のローカル新線として2002年に開業。総延長42・7㌔㍍のおよそ半分の20㌔㍍が海沿いとなっており、列車の大きな車窓からは広大な太平洋が見える。また、沿線にある20駅すべてに高知県出身の漫画家、やなせたかし氏(アンパンマンの作者)のオリジナルキャラクターを配置したり、オープンデッキを備えた展望車両を採用したりとユニークな取り組みを展開している。その結果、ファミリー層をはじめとした観光客の誘致に成功し、今年3月には安芸市に新駅「あき総合病院前駅」をオープン予定だという。コロナ禍が収束した後の旅の候補地としても最高、いつか訪れてみてほしい。