6000足の在庫をサブスクで貸し出し
定額料金を支払うことで一定期間、商品やサービスを受けられるシステムをサブスクリプション(サブスク)という。代表的なものとして映像や音楽の配信サービスが知られているが、そのサブスクを子ども向けの靴で展開しているのが㈱SlowFast。このユニークなアイデアを編み出したのが同社の谷口昌優社長(37歳)だ。着想のキッカケはコロナ禍で在宅時間が長びき、幼いわが子を散歩に連れて行く機会が増えたことだったという。「出かけるたびに玄関で靴を履かせるのだが、1足しか持っていないから毎回同じものばかり」と谷口社長。
「デザインの違う何足かのなかから選んで履かせたいが、子どもは成長がはやくてすぐサイズが合わなくなって買い替えなければならない」と。といって「複数の靴を持つのは不経済」ということでこのサブスクを思いついたそうだ。
料金プランは定額制で1足コースが月2480円、2足が2980円、3足が3700円。料金を支払い、同社のサイトからお目当ての靴を選び、配送を受ける。谷口社長によると、1カ月たてば返却してまた別の靴を注文してもいいし、気に入った場合は翌月以降も履きつづけてもいいという。靴のサイズは12~21cmで未就学児から小学校低学年生までがターゲット。
これまでに400人以上のユーザーが登録している。靴の在庫はスニーカーやサンダルなど常時6000足を抱える。「在庫は全国の人から寄付してもらったお古だ」そうだ。それを洗ってきれいにし、サイトの商品リストに載せて貸すのがビジネスモデル。谷口社長は「『うちの子にはサイズが合わなくなったが、まだ履けるので捨てるのはもったいない』という親からの申し出で成り立っている」と話す。
「シューズロス」問題も軽減
靴を洗わずに返却できるのが好評で、共働きの世帯から喜ばれているという。谷口社長は「子ども用品の量販店なら子ども靴は1足1000円程度で買える。それに比べればうちの料金体系は安いとはいえないが、時間とお金をてんびんにかけて行動するタイムパフォーマンス(タイパ)重視派の人に支持されている」と語る。
将来的にはサブスクだけでなく、商品の一部を格安で販売する部門を立ち上げたいとしている。タイパ派の満足度を高めながら、「シューズロス」問題にも挑むSlowFast、あらたなビジネスモデルが生まれる予感がする。
㈱SlowFast
東京都墨田区石原4-13-9 TEL:03-6789-3967 設立:2021年
従業員:7名(アルバイト含む) 資本金:500万円
HP:https://kutoon.net/
髙梨泰幸さん
墨田区 産業観光部産業振興課
㈱ SlowFast は、令和6年度墨田区プロトタイプ実証実験支援事業に採択されました。東武鉄道の車両 IPを活用した子ども靴の製造販売を行いながら、購買意欲とエシカル消費がどれだけ上がるのかを検証しています。現在、宅配型オンラインで子ども靴の回収を行っていますが、今後は区内の保育施設にボックスを設置するなど、事業の認知拡大のために力を注いでいます。今後の躍進が期待される企業です。
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本記事は地域における〝産業栽培〟をテーマとした月刊『コロンブス』8月号に掲載されています。同誌では毎号、全国12エリアの元気企業・躍進企業の記事を掲載‼ ぜひご一読ください。





