繊維業界を盛り上げる総合ニットメーカー

ニットの編み方のひとつに、「丸編み」がある。円状に無数の編針を配置し、糸を高速回転させることで筒状に生地を編み上げていく「丸編機」を用いたもので、網目の細かい生地を大量生産するのに向いている。この「丸編機」の保有台数で国内トップレベルを誇っているのが㈱マルゲンだ。

同社は天然繊維から合成繊維まで、ありとあらゆる素材のニット生地の開発・製造・販売を行う。「ニットというとまずセーターが思い浮かぶが、実はスポーツシャツやジャージ、体操服もニットの一種で、そうした伸縮性と速乾性が求められるニット生地の製造を得意としている」と3代目の武田有祐社長。

そして丸編機の稼働には「0.1mm単位の調整が必要で、まさに職人技と経験がものをいう」と胸を張る。だから他社には製造できない生地づくりができるという。製品の7割が衣料向けで、アウトドアウェアのほか、学生服や介護服などのユニフォーム用途も手掛ける。残りの3割は資材向けで、自動車の内装などに用いられている。

その品質の高さには定評があり、不良品率わずか「0.02%」という数字を達成している。この驚異の数字は熟練職人たちの「検反」力のおかげ、と武田社長。

スポーツウェアメーカーなどに生地を提供
高速で筒状にニットを編み上げていく丸編機

AI自動検反機でボトルネックを解消

そこで丸編み業界で初となる「AI自動検反機」を開発し、さらなる品質の向上を実現した。これまでは「検反機と呼ばれる専用機を用いて1分間に幅1m、長さ60m程度の布を目視し、1mm以下の小さな糸むら、傷、汚れなどを素早く見つけていく」という職人技に頼ってきたそうだ。

ところが、この「検反」作業では検査が追いつかず「製造工程のボトルネックになっていた」という。 開発したAI検反機には3台のカメラが組み込まれ、職人の目の役割を担っている。映像からAIが瞬時に欠点を判別し、欠点が一定数以上に達すると、職人が再チェックし、合否を最終判断する。この「AI自動検反機」の導入により、専門員以外も検査を行えるようになり、1日の検査数が20%もアップした。さらに蓄積されるデータを分析することで、検査員の知識向上にも役立っているという。

「今後もこのAI自動検反機の改良をつづけ、外販も検討していきたい。 目下、地元のブランド木材である能登ヒバを使った生地の開発にも取り組んでおり、2026年には現行の約2倍の生産規模を誇る新工場が稼働予定だ。新規事業をどんどん立ち上げ、繊維業界を盛り上げていきたい」と武田社長は意欲満々だ。

化学・電子関連の大手企業出身の武田有祐社長
職人と遜色ない精度・速度で検査を行う AI 自動検反機

越田幸一さん
(公財)石川県産業創出支援機構
企画振興部設備導入支援課アドバイザー

AI 自動検反機を導入したことで、検反処理数が約 20%向上し、検査員の残業はゼロに。従来は熟練者の目視に頼っていた検反作業も、誰でも対応可能となり、社員の多能工化がすすみました。さらに、画像処理とAI の活用により検査精度とスピードも向上。人手不足や技術継承の課題を抱える中小企業にとって、生産性向上と業務効率化を同時に実現する好事例として注目されています。