全国190社以上の義肢装具製作所と取引

病気や事故で失った四肢をより自然な姿に見せる義手や義足、コルセットなどの「義肢」。この義肢を制作する専門家が義肢装具士で、医師の指示のもと形状や寸法をきめたりと超ハード、と同時に関連する帳票作成や整理などに忙殺されているという。義肢装具士が抱えるそうしたさまざまな業務をITでサポートしているソフトウェア開発会社がケイ・タス㈱である。

「義肢装具士はタイトな仕事で定時退勤も厳しい。高齢化もすすみ患者が増える一方、装具士の成り手は少なく人数が減っている。そういった負担軽減のためのシステム提案をしている」と話すのは北野光邦社長(57歳)。作業効率化のために同社が開発したのが、患者のデータ管理のほか、見積書や装着証明書、労災伝票、領収書など各種帳票の作成・発行ができるパッケージ型の業務支援ソフト「O2Lite」(オーツ―ライト)、そのソフトを全国190社以上の義肢装具製作所や労災病院に提供している。5年前にはスマホやタブレット端末でO2Liteとデータを共有できる新システム「PO+」(ポプラ)を開発。このシステムのおかげで患者の自宅や訪問先でも病院と情報交換できるようになり、装具士などからは利便性と効率性が高まったと評判になっている。

日本義肢装具学会学術大会に出展、話題を集めた(2024年11月)
製作代行をはじめた足形測定に基づく医療用インソール

ニッチな業界でDX推進を牽引

高評価は開発ソフトだけではない。「日本義肢協会の賛助会員として業界動向に注意を払い、制度変更やニーズに即した業務改善提案を行う『伴走型営業』にも努めている」(北野社長)ことで、車いすの仕様変更や既製品の価格変更などの情報もいちはやく把握し、つねに現場のナマの声や業界の声を会員ユーザーに届けられるようになったという。

これらの情報がユーザーにとっては「役立つ、ありがたい」と重宝がられているという。だから「また使いたい、という更新率、リピート導入率が高い」と北野社長。

装具製作の負担軽減の面では医療用インソールの製作代行サービスも7月からはじめたが、同社のネライは次世代型パッケージの企画開発だ。ネット上にデータを保存し、必要なときに取り出せるクラウド 版「O2next」(オーツーネクスト)と政策伝票の自由編集に対応した最新オンプレ版「O2X」(オーツー エックス)である。「これまでは個々のニーズにカスタマイズしていたが、今後は他社の優秀なパッケージとデータ連携し、個人事業者の義肢装具士も利用できるようにしたい」と裾野の拡がりを期待する。「人と人をつなぎ、たがいに成長していきたい」と北野社長、義肢装具というニッチな業界でDX推進の牽引役となっている。

「次世代型パッケージを開発し業界に貢献したい」と話す北野社長
新システムは香川の「頭脳」を集めた小さなオフィスから生まれる

山本陸也さん
(公財)かがわ産業支援財団
技術振興部・ 研究開発支援課長

ケイ・タス㈱は 2007 年の創業以来、とくに義肢装具業界を支援してきました。同社が義肢装具士業務において、モバイル端末でも利用可能なパッケージシステムを開発したことにより、義肢装具の製作や提供の時間が大幅に短縮されました。そのおかげで義肢装具のスムーズな提供が可能となり、サービスや品質の向上、業務の効率化に大きく貢献されました。今後も地域や産業の発展に寄与されることを期待しています!