第7回は志村けんの生まれ故郷として知られ、のどかな風景が広がる東村山市へ。山本哲也さんが地域の個性豊かなグルメを味わい、その作り手たちの想いやこだわりに迫った。

地元馴染みのソースで地域を
盛り上げるポールスタア

まず訪ねたのは調味料メーカー、㈱ポールスタアの本社工場。1850年、醤油醸造業として創業した同社は現在、伝統の技法と現代の調合加工技術を融合してソースやたれ、ドレッシングなどを製造、販売している。話題の「東村山黒焼そばソース」も。ウスターソースにイカ墨や黒酒などを加えたユニークな調理用ソースだ。このソースを使った「東村山黒焼そば」が市民お馴染みのご当地グルメになっている。

というわけで山本さんは同社の工場敷地内にあるレストラン「森のキッチン」で販売している東村山黒焼そばを試食してみることに。その焼そばを見てあらためて黒々とした姿にビックリ仰天。が、味は天下一品、「イカ墨の臭みやしつこさはなく実においしい」とその独特な風味を堪能していた。

市民お馴染みの「東村山黒焼そばソース」で知られるポールスタアの看板には「無添加での商品作りを考える」とあった
「東村山黒焼そばソース」(200 ㍉㍑/540 円)と「森のキッチン」の東村山黒焼そば(390 円)
「森のキッチン」で作った東村山黒焼そばを完食! 工場見学の帰りにぜひ一杯いかが

この東村山黒焼そばソースを作っている現場を見学しようと工場に行ってみると、見学路の入口には「星のトンネル」と書かれた看板が。案内をしてくれたポールスタア総務部広報担当の石井早映さんによれば「社名のポールスタア(北極星)にちなんで、工場見学コースは宇宙船のなかのようなイメージにしている」とのこと。

課外授業などで訪れる子どもたちもこの見学路には大喜び、わくわくドキドキしながら見て回るという。見学路からはガラス越しに仕込み釜や容器への充填の様子などを見ることができる。この工場で、大人気の東村山黒焼そばソースをはじめとして「毎日10種類くらい、年間ではおよそ200種類の商品」が生産されることを石井さんから説明され、山本さんは頷きながら一つひとつの作業工程に見入っていた。

工場見学の見学路の入口には「星のトンネル」の看板が。工場見学の様子は『コロンブスTV』の動画でご覧ください! 

そして石井さんから「この東村山黒焼そばソースを活用した地域活性化にも取り組んでいる」と話が。毎年、同社は夏の海の日から黒の日まで(今年は7月21日〜9月6日)「東村山黒焼そば食べ歩きキャンペーン」を実施してきた。期間中は市内の飲食店などで東村山黒焼そばソースを使ったメニューが提供され、今年はお客さまが好みのメニューに投票をする「ひがしむらやま黒焼そばそうせんきょ」を行った。参加したのは市内の洋食や中華、ファストフードなど52店舗。9月30日に投票結果が発表され、「居酒屋 昼からひとやすみ」の「だいじょぶだぁチャーハン」が見事、グランプリに輝いた。
ならば、と山本さんも「昼からひとやすみ」のノレンをくぐり、ウワサの「だいじょぶだぁチャーハン」を注文した。店長の梅津光輔さんにレシピ開発のエピソードなどを聞きながらアッという間に完食。「これはひとことでいうと大人のチャーハン‼ イカスミのコクとゲソの香ばしさがお酒によく合いそう」という山本さんの感想に「まさにお酒の後のシメに食べる方が多いですよ」と梅津さん。

今年の「ひがしむらやま黒焼そばそうせんきょ」でグランプリに輝いた「居酒屋 昼からひとやすみ」の「だいじょぶだぁチャーハン」(715 円)
「居酒屋 昼からひとやすみ」の店長の梅津さん。試行錯誤の末、イカゲソを炒めて香ばしさを出し、カレーの風味も生かして「だいじょぶだぁチャーハン」を完成させた

市内には「昼からひとやすみ」のほかにも、東村山黒焼そばソースグルメを定番メニューにしている店が多い。「そうした店のことを知ってもらいたい、その一心で『東村山黒焼そば食べ歩きキャンペーン』を開催。今年で第16回になりました」と話すのはポールスタア代表取締役の桜井憲一氏。「地場の飲食店は後継者がいなかったり、集客力が弱かったりでホントウに困っています。当社では各店の新メニュー開発のお手伝いなどにも取り組んでいるのですが、今後は多くの人に地元グルメに親しんでもらえるようなイベントにより一層、力を入れていきたいと思います」と意気込んでいる。

ポールスタア代表取締役社長の桜井憲一氏。自社商品を生かしたイベントを企画し、地域 活性化に尽力

菓子店や農家の協力で地元産
果物の新商品がつぎつぎ誕生

濃厚な味わいの東村山黒焼そばソースの後にお口直しのデザートを、というわけで訪ねたのは1926年創業の和菓子店、清
水屋。この店では和菓子を中心としてゼリーやジャム、焼き菓子などを製造、販売している。なかでも地元の特産品を使ったお菓子が人気だという。
店主の松本國秋さんのイチオシは、梨の産出額が東京都内第2位である東村山市のブランド梨「多摩湖梨」を贅沢に使った「どらやき多摩湖梨」。これを食べた山本さん、「白あんと梨の組み合わせははじめてですが、実に爽やか」と絶賛。松本さんによれば「当初、梨の風味をうまく生かせず試行錯誤しましたが、梨を砂糖などで煮てコンフィチュールにしたところ、白あんと梨の味わいがピッタリと馴染むようになりました」とのこと。同店ではこのほか、市内のシャインマスカットを使った「羽二重餅マスカット大福」も人気だとか。気になる人はぜひ東村山散歩の折にお土産に買ってみてほしい。

和菓子店の清水屋の人気商品「どらやき多摩湖梨」(300 円)
多摩湖梨
羽二重餅マスカット大福(320 円)
「生まれ育ったこの東村山に恩を返したいという思いで地元産果物を使ったお菓子づくりをつづけている」と話す店主の松本さん

この清水屋のように、東村山市内では今、地元の果物を使った加工品開発で盛り上がっている。これについて果樹農園、東世園の2代目で東村山市果樹組合元組合長の小山斉三さんは「農作業をボランティアで手伝いに来ている方のなかにスイーツ作りが得意な方がいて、廃棄になった梨を見て『もったいない、これでおいしいスイーツをつくりたい!』と作ったものが大好評だった。これを機に市内の菓子店などと農家が連携するようになった」と話す。自身もA品以外の梨やぶどうなどを菓子店やソース屋さん、シロップ原料加工施設などに納品しており、「スイーツなどの加工品を通じて、多摩湖梨などの地元産果物の魅力が広がれば、果樹農家の活気にもつながる」と話している。

東村山市果樹組合元組合長で、東世園の2代目として多摩湖梨や多摩湖ぶどうなどを作っている小山さん

多摩湖梨を使った加工品としてはこのほか、「多摩湖梨サワー」や「多摩湖梨シャーベット」も飲食店で味わうことができる。多摩湖梨シロップは、ふるさと納税の返礼品などとして好評だそうで、今後のさらなる商品展開が期待できそうだ。

地元の「居酒屋一休」が多摩湖梨を使って開発した「多摩湖梨サワー」(会員価格330 円、定価430円)の ほか、「多摩湖梨スカッシュ」や「多摩湖梨シャーベット」を販売。東京みらい農業協同組合東村山支店の直売所でもこのサワーに使われている「多摩湖梨シロップ」が販売されており大人気

地場企業が手掛けるこだわり調味料のご当地グルメや地元産果物の絶品スイーツを心ゆくまで満喫した今回のぶらり旅、山本さんからは「地元グルメの作り手の熱意や想いが伝わってきたし、味わうことができた」と。YouTubeチャンネル『コロンブスTV』で公開中の動画では、山本さんによる各企業や店の人たちへのインタビュー内容もより詳しく紹介しているので、ぜひチェックしてみてほしい。