チャンスメーカー㈱は創業112年の老舗印刷会社。斜陽産業ともいわれる印刷業界で、今なお成長を遂げている企業だ。その秘訣は、ダイレクトメール(DM)などを有効に活用した販促サービスにある。
広告で「業績アップのお手伝いをしたい」という 平林社長

かつて、売り上げの8割が官公庁の制作物だったそうだが、平林満社長(52歳)は入社時(約30年前)にこれからは「価格ではなく、品質やサービスといった実力で仕事を増やしていきたい」と決意したという。さっそく、声がけしたのが地元の専門学校だった。学校案内の制作にチャレンジしたのだ。そして、平林社長は高校生がいる家庭を訪問し、どのような教育、どのような先生を求めているかを徹底的にヒアリング。その内容を「パンフレット制作に反映させたらどうか」などと、広告代理店のようなアドバイスもしてみたそうだ。すると、そのパンフレットのPR効果が高かったのか、評判も上々で、60人ほどだった新入生が200人に増えたという。

このように、独自の提案型ビジネスを強化していった平林社長は、2003年に社長に就任。その2年後にはノベルティ(販促のために無料で配布するグッズ)の通販サイト「販促花子」を立ち上げた。「ポケットティッシュやうちわといったノベルティはいわば広告のおまけで、これが広告の『開封率』を上げるのに大きな効果を発揮するし、印刷とのシナジーも大きい」と確信したからだ。しかも、こうした取り組みを印刷会社が独自で行うことはめずらしく、「全国の印刷会社に営業をかけたところ、『自分たちでつくるより楽』という理由で多くの注文が入った」と平林社長は笑顔を見せる。

グループ全体で成長をはかっている チャンスメーカー

「販促花子」によって一躍、知名度が上がった同社だが、平林社長の挑戦はこれだけでは終わらなかった。「Eメールは開封されずに見すごされることもあるが、DMはほとんどの人がとりあえず開封してくれる。なのに、コストと手間の問題でDMを敬遠している企業が多い」ということに注目し、今度はデジタルとアナログを融合させたDM事業に注力しはじめたのだ。こうして新サービス「DMクラスター」が誕生した。企業の顧客データをデジタル管理することで、1通から印刷、発送ができるのが特徴だ。その時間は最短5時間で、翌日には顧客のもとに到着する。しかも「すべてのDMに同じ紙を用いることでコストを削減し、小ロットへの対応も実現した。また、工場から直接顧客に発送することで短納期を可能にした」と平林社長は話す。こうしたアイデアが奏功して、「2、3年後には売り上げが30億円から100億円規模に成長すると見込んでいる」と、平林社長は自信タップリだ。
これら一連のサービスについて「販促に悩む全国の中小零細企業に活用してもらいたい」と話す平林社長。そのために「地方に代理店を置いて販路を拡大し、地域経済の活性化に貢献したい」とも。老舗企業の進化はまだまだつづくようだ。