JAも低コスト肥料供給

生産資材価格の高騰対策で鹿児島県は、農業分野では国の支援措置に合わせて緊急支援事業を9月補正予算案に計上している。さらに化学肥料低減の取り組みも進めており、堆肥を活用した土づくりを推進。JAも堆肥入り低コスト肥料の供給を開始している。

9月定例県議会代表質問の答弁で、松薗英昭農政部長は「化学肥料価格の高騰対策として土壌診断による施肥の効率化や、家畜排せつ物で堆肥の有効活用により化学肥料の使用低減を図ることは農家の経営安定のため重要な取り組みと考えている」との見解を示した。

具体的に挙げたのが農家に対しての堆肥を活用した土づくりや、肥料効果の高い鶏ふん堆肥の利用などを推進。県農業開発総合センターでは品目ごとに堆肥入り化学肥料と、これまで使用していた化学肥料との効果の比較など化学肥料の低減につながる技術開発が進められている。また、7月にはJA県経済連が茶および園芸作物用に化学肥料と同様に使用できる堆肥入り低コスト肥料の供給を開始。県産堆肥を30㌫使用した肥料で、類似肥料に比べて価格は3割安く抑えられている。

松薗部長は「今後、肥料原料として堆肥の活用が期待される」として県では引き続き農家に対し、▽土壌診断に基づく適正な施肥▽全面施肥から効率的な局所施肥への転換指導▽堆肥の肥料効果や肥料としての利活用の周知―を図り、化学肥料の低減に向けた取り組みを推進していく。

農業分野における生産資材の高騰が続く中、生産コストの上昇を販売価格に転嫁することは難しい状況にある。県は6月補正で支援事業を計上したが、9月補正案でも関連した事業を盛り込んでいる。生産資材の中でも特に価格が急騰している肥料について、化学肥料の2割低減の取り組みを行う生産者に対する肥料コスト上昇分の7割を支援する国の措置に合わせた県の支援事業を計上。肥料価格高騰緊急支援事業(4億1500万円)で、上昇分の一部を県も支援する。また、多岐にわたる品目に用いられる農業用ビニール資材について価格上昇が多くの生産者に影響を及ぼすことが懸念されることから、上昇分の一部を支援する経費(被覆資材価格高騰対策緊急支援事業=5億9581万8000円)を計上している。

配合飼料の多くを海外に依存している中、畜産経営で飼料高騰変動などのリスクを減少させるには自給飼料の生産拡大が課題となっている。そこで県は畜産公共事業により耕作放棄地などを草地や飼料畑に整備する農家を支援しているほか、収量向上のためトウモロコシやイタリアンライグラスなどの優良品種の選定試験を畜産試験場で実施、各地域で実証を農家が設置している。

(奄美新聞 2022年9月19日)