(上)重作業労働の負担軽減効果が期待される「ジーパックローダ」

日本人の朝食といえば、鶏卵の「卵かけご飯」を思い浮かべる人も多いだろう。しかし、海外では食中毒を敬遠して生卵を食べない国が多く、日本をはじめ一部の国でしか生卵は流通していない。ではどうして日本は生卵を食べることができるのかというと、鶏卵流通の過程で洗浄や選別などの徹底した衛生管理がなされているからだ。そんな日本の食文化を支えているのが共和機械㈱、鶏卵の自動選別包装システムのパイオニアだ。
海外の技術も積極的に取り入れている 友末社長

機械の特徴に触れる前に、まずはユニークな創業秘話を紹介したい。同社の創業者、友末弘氏は終戦後、自宅の蔵に籠って機械技術の研究に没頭していたという。しかし、とくに収入を得ていたわけではなく、一家は食料を確保するために養鶏をはじめたそうだ。当時14歳の長男、誠夫氏(後の2代目社長)は、市場で売るための大量の卵を手で洗う毎日をすごしていたという。しかし、あまりにも効率が悪いため、卵を回転ブラシで洗う装置をみずから開発した。ある日、担任の先生のすすめで大手新聞社が後援する学生児童発明くふう展に応募したところ、この年の内閣総理大臣賞を受賞。その新聞記事を読んだ全国の養鶏場から問い合わせが殺到し「これは世のための技術になる」と踏んだ弘氏が機械化し、世界初の自動洗卵機が誕生。翌年に共和機械工業所を創業したという。

それからというもの、同社では鶏卵事業者向けの装置の開発をつづけた。1980年代からはコンピュータ制御を取り入れ、 洗卵だけではなく選別、包装とすべての工程を自動化。 洗卵の処理能力に関しては、 1号機が毎時1600個だったのに対し、最新の「SKYシリーズ」は毎時11万4000個にもなるというから驚きだ。また、衛生面にもこだわり、洗卵機や乾燥機の全自動泡洗浄機能もオプションでつけられるようにしたという。

共和機械の鶏卵選別・包装 装置。国内約3割のシェアを 誇る

実に高度なシステムだが、「まだまだ人手がかかる作業だ」と3代目の友末琢磨社長(48歳) は話す。 卵はデリケートなため、装置に移送する前にヒビが入ったり割れたものを回収する人や包装したものを運搬用のコンテナやラックに運ぶ人など、ひとつのラインに計10人ほどは必要になるのだ。そこで、友末社長は人手不足で悩む養鶏場の声に応えるべく、省人化にもチャレンジ。パック卵を吸着して搬送ラックに自動で積み込む垂直多関節ロボット「ジーパックローダ」を2020年に発売したのだ。「引きつづき省力化装置の開発に注力し、30年までにラインに必要な10人を半分にしたい」としている。今後も「世の中のためになる技術開発をつづけていきたい」と話す友末社長には、やはり「発明家一家」の魂が宿っている。