(上)訪問看護ステーションには24 時間「ナースコール」ができる

高齢化社会において、介護を必要としない元気な高齢者「アクティブシニア」が増加している。事実、要介護認定を受けている65歳以上は2割程度で、8割は自立して生活しているといわれる。ただ、ひとり暮らしの高齢者も多く、近年は「孤独死」も問題となっているため、グループホームのような施設が活用されてきた。しかし、元気な高齢者向けの生活サポートや娯楽施設が充実した施設は、大手デベロッパーが手掛けたものだと一時金が数千万円、家賃20万円超えという例も。富裕層以外はなかなか入居できないのが実状だ。
祝嶺社長は料理人だった頃の経験を生かし、月に1度、 利用者に無料で懐石料理を振る舞っていたことも。このイベントは今でも引き継がれている

訪問介護事業を手掛ける㈱ライフケア・ビジョンはこのあたりに着目、2020年から「シニアアップデートマンション」の運営を手掛けてきた。特徴は、独自の見守りシステムつきの賃貸マンショであること(家賃は1DKで11万2000円~)。たとえば、入浴中の脈拍や呼吸数を計測する浴槽センサー、同じく呼吸数などを測り眠りの状態を調べる睡眠センサーなどが完備されている。そして、これらのデータを近隣の訪問看護ステーションにいる看護師が24時間体制でチェックし、緊急時に備えているという。とくに浴槽センサーはメーカーと共同で改良を加えたとあって独自の機能が満載、 万が一浴槽内で溺れてしまっても、お湯を浴槽の側面からわずか1分で強制排水することができるそうだ。

浴槽の排水システム。センサーが呼吸数の乱れなどを検知すると自動で起動する

料理人、不動産業といった職を経て、介護事業を立ち上げた祝嶺(しゅくみね)良太社長(41歳)は、こうしたITシステムの必要性を創業間もない頃から強く感じていた。「深夜の見回りの際に、部屋のドアをソッと開けても利用者が目を覚ましてしまうことがよくあった。そのときからITシステムで見守りができれば、利用者にとってもスタッフにとっても負担が減るのではないかと考えていた」と祝嶺社長。実際、睡眠センサーを自社が運営する有料老人ホームで導入してみると、利用者の睡眠時間が長くなっただけではなく、スタッフがほかの業務に集中でき、月の平均残業時間を1時間以内に抑えることに成功したという。

こうした独自の介護ノウハウが詰まったシニアアップデートマンションには、居住する高齢者にとっても、その家族にとっても安心・安全な要素が盛りだくさんだ。コロナ禍でのオープンとあって十分なPRができなかったというが、最近は問い合わせが増えており、続々と入居がきまっているという。「現在の部屋数は42室だが、将来的には400室を目指したい」と力を込める祝嶺社長。あらたな介護業界の旗手となりそうな予感がする。