(上写真)水素ステーションの電源も焼却熱のサーマルリサイクルでつくられる

汚泥や廃油などの産業廃棄物の収集から処理、リサイクルまでを一貫して手掛ける青木環境事業㈱では、「地球に笑顔、社会に笑顔、未来に笑顔」をスローガンに掲げ、脱炭素社会に向けた取り組みを積極的にすすめている。

その一環として、太陽光発電設備を本社事務所などに設置したほか、2020年には廃棄物を燃やすときに発生する熱エネルギーを回収利用するサーマルリサイクルで発電を開始。さらにその余剰電力で水素ステーションを運営するなどしている。カーボンニュートラル(二酸化炭素など温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること)が世界中の目標となった今日、まさに注目度急上昇中の元気企業だ。
同社がサーマルリサイクル事業をはじめて手掛けたのは2007年のこと、1号焼却炉の800℃近い焼却熱を隣接した乾燥処理施設で活用し、含水率70~80㌫の有機汚泥をサラサラにして、乾燥汚泥をつくったのがはじまりだ。そして、廃棄物の処理能力向上のために2号炉の建設計画が持ち上がった際、青木俊和社長(55歳)は「カーボンニュートラルの問題が大きくなってきたこともあって、廃棄物発電に乗り出すことにした」という。その計画は最大出力1050kWhの電力で、1号炉、2号炉の動力を含めた構内のすべての電力をまかない、年間約3500㌧の二酸化炭素の削減(一般家庭約1000世帯分の排出量に相当)することを目標にした。総経費は28億円かかったが、環境省の「低炭素型廃棄物処理支援事業」による補助金を得ることができ、製造は廃棄物処理プラント大手の㈱タクマが担当。こうして2020年から稼働しはじめた2号炉は、脱炭素を使命とする同社のこれからを担う施設のひとつとなっている。

脱炭素と顧客の利便性を追求する青木社長
回収車が産業廃棄物を集めてくるところから事業ははじまる
自社でつくった水素エネルギーで燃料電池フォークリフトを走らせる
       

しかも、現在はその余剰電力を使って、社内で運転していた「燃料電池フォークリフト専用水素ステーション」で水素エネルギー製造も展開。余剰エネルギーで二酸化炭素を排出しない水素エネルギーもつくる――。まさに脱炭素の究極のカタチといえそうだ(現在、水素ステーションは故障中だが、来年初頭には復旧の予定)。
「それでも改善の余地がある」と青木社長は不満気だ。というのは、現状の電気出力が日々の焼却物の中身や量に左右されるからだ。「運用しだいではまだまだ力を出せる。また、2号炉は休止日が年間約60日あり、その間は電力を買わないといけないし、逆に2号炉が動いていて1号炉が止まっているときには余剰電力を東北電力に無料で渡すことになる。自家発電をより効率的に使えるように稼働日のバランスをとったり、蓄電できない電力を売電する仕組みなどを導入していきたい」と。
また、廃棄物回収事業に関しても「今は自社で処理できないものはお断りすることもあるが、いずれはすべての廃棄物をワンストップで受けつける体制を構築したい」と力を込める。脱炭素と顧客の利便性を追求する青木社長に妥協はないようだ。