(上写真)甘さ控えめでコクのある新食感も人気の味噌スイーツなどの商品

急峻な山と渓谷に挟まれた静かな市街地を甲州街道(国道20号)の「富士みち」沿いにすすむと、どこか伝統の香りを漂わせる小さな蔵が目に飛び込んでくる。1936年創業の㈱吉村味噌糀店(山梨県大月市)がそれだ。

2021年9月の味噌蔵改装を機に、味噌と糀という主力商品に加えて、同社が店頭に並べたのが「味噌スイーツ」。口コミで人気が広がり、地元のみならず市外からも新しい味を求めて訪れる客が少なくない。
味噌スイーツはイチから開発したものではなく、幼い頃から菓子作りが好きだった上田由美社長(54歳)が地元のさまざまなイベントで振る舞い、すでに口コミで人気となっていたものがベースなのだとか。商品化にあたっては管理栄養士の姉、フードコーディネーターの妹という心強い味方の手助けもあった。なかでも人気なのは「味噌シフォンケーキ」(230円)と「味噌プリン」(270円)で、たとえばシフォンケーキは小麦粉に玉子、油、砂糖といたってオーソドックスな材料に、裏ごしした味噌をわずかに加えることでコクがあり、ふんわり、モチっとした生地に仕上がっている。実はこのほかにも予約限定のデコレーションケーキも。インスタグラムに掲載したところ話題を集めたが、上田社長がひとりで作っているため、週に4~5個程度しか作れないのが悩みの種だという。

「天然醸造で無添加の味噌の良さを伝えたい」と意気込みをみせる上田社長
遠方からの参加者も多い「味噌作り教室」

ただ、市販の一般的な味噌では同じ味は出せないという。糀と大豆(北海道、富山県産)、天日塩だけを混ぜ合わせ、蔵で1年以上寝かせた天然醸造で無添加の味噌だけが成せるワザだ。山梨県内では手造り・天然醸造・無添加にこだわる店が5軒しかないといい、同店では創業以来その変わらない味と製法を守りつづけている。かくいう上田社長は創業者の孫にあたり、17年9月に店を継ぎ法人化。現在は米味噌と甲州味噌(米・麦)のそれぞれマイルドタイプとコクタイプの計4種の味噌を販売しているほか、「甘酒の素」「塩糀」「味噌のたまり」をラインアップ。さらに22年4月には湯を注ぐだけで味噌汁ができる「みそ玉」の販売もはじめた。業務用では大月市、隣りの都留市、富士河口湖エリアのホテルや、名物・吉田うどん、ほうとう店などと取り引きし、ネット販売も行っている。
一方で、上田社長が定期的に実践しているのが「体験味噌作り教室」だ。希望に応じて1回4~5人、週1回程度同店で実施している。吉村味噌のファンの要望ではじまり、22年12月には東京・小金井でも出張教室を開催。「天然醸造味噌は体内の毒素や有害物などを体外に排出する効果があるともいわれ、抗酸化作用も注目されている。この取り組みを通じ、そういった効用も伝えていきたい」と上田社長。幼稚園や小学校でも体験教室を開いているが、「味噌の良さを伝え、子どもたちの健康のためにも体験教室を増やしたい」と〝味噌の伝道師〟としての抱負を語る。