(上写真)展示会に出展した「ゆらぎ試作キット」とイルミネーション

ホームページを開くといきなり、女性の屈託のない笑顔が飛び込んでくる。画面には「BE HAPPY TOGETHER!」の文字。ソフトウェア開発の㈱東日本技術研究所はこの「一緒に幸せになろう!」というシンプルで明快な合言葉を胸に、システムソリューション分野で地域貢献を目指しているユニークな企業である。車載ソフトや社会インフラ制御などコア技術の実績は厚く、地元では親しみを込めて「東日(トウニチ)」と呼ばれている。最近ではα波の研究から培ってきた独自の「ゆらぎ」技術を生かして、応用分野への展開をすすめている。
昨年12月、東京ビッグサイトでの「新価値創造展2022」(中小企業基盤整備機構主催)に出展されたイラストレーター用プログラムモジュール「ゆらぎプラグイン」もそのひとつだ。ブースにはこのプラグインを使ってデザインしたボトルやアクリル写真立てといったサンプルが並び、落ち着きを感じさせる文様が来場者の目を引いた。その根幹にあるのがゆらぎだ。人の心拍の間隔やロウソクの炎の揺れ、小川のせせらぎなどが好例で、学術的には「1/fゆらぎ」(スペクトル密度が周波数fに反比例する)といい、細胞の電気パルス(生体信号)発射間隔に相当するとされる。簡単にいえば癒し・快適さをもたらす信号であり、来場者からは「綺麗」「製品に応用したい」といった声が寄せられ、同社はたしかな手応えと可能性を感じている。

「ユニークな技術やアイデアによるビジネスを創造するという経営理念こそが東日の真骨頂だ」と話す安島取締役
最新のモジュール「ゆらぎプラグイン」を使ってデザインした花柄模様
若手社員を中心として、つねに斬新な案件を模索する
                 

だが、ここにいたるまでには長い年月を要した。「ユニークな技術やアイデアによるビジネスを創造する、という経営理念から1998年頃に脳波のシステム開発に着手した。そして、個人のパフォーマンスを最大限に引き出すというα波の誘導装置を手掛けるなかで、ゆらぎの存在を知った」と話すのは関東支社長を務める安島宜績取締役(53歳)。こうして同社は99年に専門組織を発足。その過程でドクターとの接点が増加し、病院のIT化が遅れていることからまずは電子カルテなど医療情報システム構築に注力することに。こうしてゆらぎ研究はいったん〝休眠状態〟となったが、電子カルテを中心とする医療分野の売り上げは年間4億5000万~5億円に成長。デジタル化の流れのなかで全国60病院にシステムを納入するまでになった。
ところがコロナ禍となって1年後、製薬会社や照明機器メーカーなどからこぞってゆらぎに関する問い合わせが。「世の中が癒しを求めている」ことを察知した同社はあらためてゆらぎの研究に取り組み、その一環としてデザインへの応用に取り組みはじめたのだ。
今年4月19日には東京ビッグサイトで開催される医療機器の製造・開発に関するアジア最大級の展示会「メディテック ジャパン」に出展予定。そこでもユニークな技術で「ともに幸せになる」ソリューションを披露していきたい、としている。