(上写真)母の日イベントの特設売り場。一面カーネーションで覆われる

三重県津市の㈲フナハシ(舟橋秀晃社長)は、津市を中心に県内8軒のスーパーの店内に花売り場を設けるフローリストだ。秀晃社長の妻で取締役のひとみ氏は「スーパーの花売り場は仏事用の和花がメインで地味なイメージがあるため、うちは洋花に力を入れている」と持ち味をアピールする。事実、その売り場はカラフルな洋花が前面に配置され、全体からはカラフルな印象を受ける。「スーパーの花売り場は一般に出入口付近にあるので、お客さまが入店した瞬間、視覚を通じて華やいだ気分になってほしいという思いもあった」と語る。
イチオシの花はアルストロメリア。ピンク、黄などカラーバリエーションが豊富で、花束やフラワーアレンジに重宝されている。1本の枝に多くの花をつけ、ボリューム感が出るのも特色だ。価格が1セット398円と手頃なのもうれしい。この花にかぎらず、同社では主力商品の価格を398円で揃え、買い物ついでに買い求められる気軽さを演出している。
もちろん、春はチューリップ、夏はヒマワリ、秋はワレモコウ、冬はクリスマスアレンジと季節感も大切にしている。そして、その際には「季節を先取りするのが秘訣」とひとみ氏。チューリップなら春本番前に店頭に並べ、春を心待ちにしている消費者心理を汲み取る。もちろん、弔事につきものの和花の人気も根強いが、その点については「キクの和花セットに1本、ピンクのカーネーションを入れ込み、洋のテイストを出す」などのこだわりを見せている。

アルストロメリアをメインに据える売り場
「スーパーの花屋さんの庶民性と独立店の高級感を融合させたい」と語る 舟橋ひとみ取締役
花を運ぶ社用車。サイドボディーのロゴがユニークだ
                 

そんな同社の創業者は秀晃社長の両親だが、5年前に相ついで他界し、夫婦で経営を引き継いだという。「最初は仕入れ値相場の変動に翻弄され、赤字になったり、廃棄が増えたりと大変だった」とひとみ氏は当初の苦労を振り返る。それでも、仕入れ先の仲卸業者からの助言を受け、徐々に相場観を養い、廃棄量を減らしていったという。
「これからも先代の経営方針を踏襲しながら、洋花の比率を高めるなど新しいやり方を取り入れていきたい」と意気込むひとみ氏。すでに先代時代は9対1だった和花と洋花の比率を4対6に逆転させるなど、あらたな取り組みに挑戦しているが、昨今も良質な花をつくる産地や生産農家のリサーチに注力している。また「フローリスト業界では独立店を構える業者が高級志向に走る一方、当社のようなスーパー間借り派は庶民路線を歩みつづけているが、この状況をチョッと変えたいと考えている」とも。いずれは「スーパーでも高級店の花が買える」よう、低価格・高品質の花を提供する道を模索しているそうだ。「スーパーのサービスカウンターでフラワーアレンジメントの予約を受けつけられるようにしたい」という将来像を描くひとみ氏、その夢はさらに広がっていきそうだ。