東京都心からのアクセスが良く、豊かな自然と特産品に満ち溢れた東京多摩地域。本コーナーでは、東京都商工会連合会 多摩観光推進協議会と連携し、新しい多摩の観光の魅力をお伝えしていく。今号のテーマは「地酒」。多摩の地酒といえば日本酒を思い浮かべる方が多いかもしれないが、実はそれ以外にもビールやワイン、焼酎など多摩各地で個性豊かな地酒造りが行われている。さっそく紹介したい。

〝東京産〟のワインづくりと
農福連携を実践‼

まず紹介するのは、あきる野市の「ヴィンヤード多摩」。東京都内とは思えないのどかな風景のなか、約60㌃のブドウ畑を有するワイナリーだ。その代表を務めているのはなんと、現役の歯科医師として羽村市で歯科医院を経営する森谷尊文さん(71歳)。ワイン好きが高じて2015年からワイン用のブドウ栽培に乗り出し、現在では自社畑と契約農家で栽培されたブドウで年間約5000本、22種類のワインを醸造している。なかでも人気が高いのは、自社畑のヤマソーヴィニヨンを100㌫使った正真正銘〝東京産〟のワイン「TOKYO ROUGE」。ヤマブドウとカベルネソーヴィニヨンの特徴が掛け合わされた、エレガントで野趣も感じられる味わいの逸品だ。

自社ブドウ畑。東京都内とは思えないのどかな風景が広がっている。この自社畑のほか、近郊の山梨県や長野県産のブドウも使っている
自社畑で育てられたブドウ
自社畑のブドウを100%使った”東京産”ワイン「TOKYO ROUGE」(ヤマソーヴィニョン、750 ㍉㍑/ 5500 円) と「TOKYO BLANC」(モンドブリエ、750 ㍉㍑/ 5500 円)
地域の高齢者や障がい者たちが農作業に取り組んでいる

森谷さんはこの東京ルージュをはじめとするさまざまなワインづくりに取り組みながら、同時に「地域の活性化や高齢者・障害者福祉に貢献したい」という当初からの思いで「農福連携」も実践。近隣の福祉施設と連携し、障がい者や高齢者らをスタッフとして受け入れている。「週4日、農作業などに従事してもらっており、彼らが栽培したブドウをメインに使ったワインの完成を目指して、皆やりがいを持って働いている」という。もちろん、森谷さん自身も歯科医師として働くかたわら、時間を見計らっては畑へ行き、実際に誘引・剪定作業などに励んでいる。今後の目標は「畑を拡張し、自社畑で育てるブドウを増やす」こと。「年間10~12㌧、ワインにして1~1.2万本を売り出せる体制を整えたい」と意気込んでいる。今後、多摩の特産品としての〝東京産〟ワインの知名度と評判がますます高まっていきそうだ。

ヴィンヤード多摩 森谷尊文さん

現役の歯科医師として羽村市で歯科医院を経営するかたわら、こだわりのワインづくりと農福連携に取り組んでいる。
https://vineyardtama.com/

地元農産物をたっぷり
使った地ビール

つづいて、2016年に三鷹市で初めてのクラフトビール醸造所としてオープンした「OGA BREWING(オージーエーブルーイング)」を紹介したい。現在、15種類のクラフトビールを年間約5万㍑つくっているというこの醸造所。代表の小笠原恵助さん(48歳)のビールづくりは少しユニークだ。「まずつくりたいビールのイメージを細かく紙に書き出し、それを基に材料の麦芽やホップ、水、酵母、副原料の組み合わせ、配分などを考えながらレシピを組み立てていく」そうだ。そして定番の「三鷹ウィートエール」や「三鷹ペールエール」などのほか、原料に地元産の農産物を使ったビールにも挑戦。「都市農業を盛り上げるキッカケにしたいという思いで、三鷹の名物であるキウイやブルーベリーなどを積極的に使っている」という。たとえば「北野の杜ビール」は、三鷹産の大麦と小麦を原料に使い、三鷹の地下水で仕込んだビールで、ゴクゴクと飲みやすい味わいが特徴のライトエール。地元のキウイを贅沢に使った「M.CKIWI」、ブルーベリーの甘みとほのかな酸味が感じられる「M.C.B.B」といったフルーツエールも人気だ。

マンションの1 階にあるOGA BREWING の醸造所。カフェも併設されている
地元農産物をふんだんに使ったクラフトビールのライン アップ。右から「M.C KIWI」(330 ㍉㍑/ 605 円)、「北野の杜ビール」 (330 ㍉㍑/ 605 円)、「FLAMANGO IPA」(330 ㍉㍑/ 715 円)

また、小笠原さんはこうしたビールづくりのかたわら、地域のにぎわいづくりのための活動にも取り組んでいる。オージーエーブルーイングが開催したビールのデザインコンテストはそのひとつ。さまざまななカルチャーの発信地である吉祥寺をイメージしたラベルのデザインを募集、審査員はアートディレクターや建築家らが担当し、90を超える応募作品のなかから5作品が入賞したという。ちなみに、最優秀賞と優秀賞のラベルが貼られたクラフトビールはこの5月末から近隣のコンビニエンスストアと同社ECサイトで販売されているのでチェックしてみてはどうか。

OGA BREWING 小笠原恵助さん

地元の特産物をふんだんに活用したビールを手掛けつつ、地域の活性化にも奮闘中。
https://oga-brewing.com/

東京産のワインと、地元の特産物をふんだんに活用したビール。いずれの〝地酒〟も素晴らしい味わいなのはもちろんのこと、造り手たちの地域活性化への思いが感じられる逸品だ。日本酒だけではない、東京多摩の多彩な〝地酒〟を味わいに、ぜひ現地に足を運んでみてほしい。

今回の記事については、東方通信社グループの YouTubeチャンネル『コロンブスTV』の番組「東京TAMAらん旅図鑑」で関連動画を公開中!ぜひご視聴ください!