ふるさと納税の返礼品の傾向や種類は、自治体や寄付者のニーズによってさまざまです。一般的には、食品(肉、魚、果物、米など)、加工品(お菓子、調味料、酒など)、雑貨(タオル、バッグ、文具など)、旅行や体験(宿泊、レジャー、イベントなど)などがあります。返礼品には地域の魅力や特色を伝える役割がありますが、一方で、課題も多くあります。地域間の競争が激化し、高額や豪華な品が増えることで、寄付の本来の目的が失われたり、地域の財政に負担がかかったりすること、品質や安全性の不備や、配送・管理のトラブルなどが挙げられます。ふるさと納税は、寄付者と自治体とのつながりを深めることで、地域の活性化や発展に貢献できる制度です。これからは価値や意義を高めるために、地域の魅力や特色を伝えるストーリーやコンテンツの充実が必要です。元気企業は各地で地域から特色あるモノやコトを探し出し、雇用も生み出そうとしています。まさに開拓者といえる企業です。

■各地でユニーク・高品質なお宝を見つけだす深堀りのチカラ

自治体のふるさと納税関係の業務を受託している㈱スチームシップは、経営理念の柱に「地域密着」を打ち出している。陶磁器の波佐見焼の産地として知られる長崎県波佐見町を本拠地として九州を中心に7県に支店・営業所を構え、常駐スタッフが地元の生産者や事業所、芸術家などを訪ね歩き、ふるさと納税の返礼品になりそうな逸品を探し歩いている。返礼品の登録先として取引関係にある自治体は現在33市区町村。スタッフが地域住民と密なコミュニケーションを重ねて発掘した返礼品は、たとえば伝統的な招き猫のフォルムにあらたな要素を加えた陶芸家・古賀崇洋氏の「NEO MANEKINEKO」シリーズ(福岡県那珂川市)、海藻を含んだエサを食べて育ったニワトリの甘味とコクのある卵(熊本県山都町)など、ユニークで高品質な〝お宝〟ばかりだ。

■足しげく通うことで作り上げる信頼が紡ぐ実績

長崎県五島市の返礼品の名物「鬼鯖」も人気が高すぎて手に入りにくく、以前は返礼品には不向きといわれていたが、同市出身のスタッフが人脈を生かして安定的に確保できる体制を整え、登録ラインアップに加えたそうだ。ちなみに波佐見焼の返礼品は3,500品目に上るという。

これもスタッフが100軒以上の事業所を回り、信頼関係を築いた賜物(たまもの)といえる。藤山雷太社長(40歳)は「冒険小説では宝物ははるばる遠方に出向かないと見つからないが、地域の宝物は足元に眠っている」と話す。自社のことを「地域の宝探しカンパニー」と自称するのもうなずける。社名をスチームシップ(蒸気船)とし、支店・営業所をポルト(港)と呼んでいるのも、かつての北前船の交易ぶりを想起させて実に楽しそう。

地域の宝探しカンパニーの理念を語る藤山社長
ポルトでミーティングをするスタッフ

■モノコトとヒトを地域に確保して見える「三方よし」の未来

同社の注目すべき点は、地方に働く場を確保しようとしていることだ。200人余りの若者がポルトを拠点に働いている。さらにスタッフの志願者は計2,200人を超え、エントリー希望者は毎年1,000人のペースで増えているという。藤山社長は「毎日のように採用面接に追われている」と苦笑いするがその反響にうれしい悲鳴を上げている。志願者のなかには若者のUターン組も多いという。市区町村も彼らによって「にぎわいが増す」と歓迎している。返礼品の発掘、就労機会の確保、地域活性化と同社の運営スタイルは近江商人の哲学とされる「三方よし」を現代に再現しているといっていい。「将来的にはポルトを47都道府県に広げたい」と藤山社長。「全国津々浦々で宝を発見し、地域の魅力をアピールしたい」と意気込む。

福岡県のポルトの一角にコーヒースタンドを設け、交流の場も
社長の自社採点

大塚友絵さん 長崎県ビジネス支援プラザ インキュベーションマネージャー

太鼓判押します!

地域密着型ふるさと納税事業をメインに急成長中のスチームシップは、地域の未来を変えていくであろう企業です。同社の魅力は、働いている皆さんに笑顔が多く、地域で元気に明るくパワフルに仕事をしている点にあると思います。地域の宝物を世の中に届けることをミッションに、地域の事業者に寄り添いながら、その地域だからこそのポテンシャルを引き出すチャレンジングな仕事ぶりに今後も目がはなせません!