市場に出回らないB 級品の農水産物を動物園や水族館の動物に提供して施設経営を支えるユニークな事業を展開しているのが㈱OHANA(東京)だ。福島、広島、愛媛 3 県の農業・漁業者の協力を得てB 級品を買い取り、各施設にエサとして無償で届ける。提供先は羽村市動物公園、ジャパンワイル ドライフセンター(ともに東京)、アロハガーデンたてやま(千葉)、おさるランド&アニタウン(栃木)、日本モンキーセンター(愛知)、虹の森公園おさかな館(愛媛)の 6 施設。この事業の財源を支えているのは全国 の個人の動物ファンで、同社のサイトに掲 載されている各施設の動物のなかからエサ を提供したい「推し活」の 1 匹(羽)を定め、金銭を寄付する。サイトにはニホンザルや コツメカワウソ、レッサーパンダなどの動 物たちの名前や所属施設先が静止画と動画 つきで紹介され、推し活ファンは目当ての 動物を指定したら 2000 円、5000 円、1 万円の金額別にエサ代を拠出する。それを資金 に同社が農水産物を買い取り、ご指名の動 物がいる施設に送る。そして推し活ファン のもとには、現地に届いたエサを食べる動 物の動画が返礼品として送られる。農水産 物はリンゴやみかん、マメアジなどで、フ ードロス対策にもなっている。事業は昨年 10 月にスタート。口コミでファンが広がり、登録者は現時点で約 800 人に上る堅調な実 績をあげている。

同社は棚木悠氏が立ち上げ、1 人で運営している。この事業に乗り出したキッカケはもともと動物好きで、好みの動物を追いかけているうちに動物施設の経営が厳しい実情を知り、経営を圧迫するエサ代の負担を軽くする事業を発想した。実家が農家でもあり、フードロス対策の意識も高かったという。棚木氏は「思い描いていたことがビジネスとして形にできた」と手応えを感じている。同社は寄付にともなう手数料収入で経営を維持。「今年は採用活動もスタートし、登録者、提携農家・漁業家、提携先の動物施設を増やしながら事業を拡大していきたい」と前を向く。

(株)OHANA
https://app.helloohana.co.jp/

提供野菜にはカブも
届いたマメアジをペンギンに与える飼育員