農業は大きく、各農家が独立して営む自営就農と農業生産法人に勤める雇用就農のふたつに分かれる。実は後者のほうが多数を占めているのをご存じだろうか。たとえば福島県の 2023 年度の新規就農者 367 人のうち自営就農が 158 人なのに対し、雇用就農は 209 人と全体の半数以上となっている。実に雇用就農が多いのだ。理由は「異業種から飛び込む就農志願者にとって農地の取得は簡単ではなく、まずは農業法人に勤めて経験を積み、将来的に独立を模索する道を選択する人が増えているから」だそうだ。こうした雇用就農が増えるトレンドに注目したのが同県南相馬市。雇用就農を目指す人の育成に特化したみらい農業学校を今年4月に開校し、15 人の 1 期生が学んでいる。

同校は廃園になった幼稚園をリノベーションして設置された施設を学び舎として使用し、2.5 haの隣接した農地を圃場(ほじょう)として使う。施設の設置は市、運営は農業人材の育成に取り組む㈱マイファーム(京都)が担う公設民営型だ。在学期間 1 年間の全日制で座学、実践のカリキュラムが組まれ、稲作、畑作、園芸と全般を学ぶ。農業経営、スマート農業など時代に即した分野も習得するほか、地元の農業法人で見習いとして働くインターンシップ制度も設けている。授業料は年 30 万円。1 人年 150 万円の就農準備資金を受給できるほか、市営住宅のあっせんや家賃補助などさまざま行政サービスが受けられる。1 期生は 20 ~ 50 代の男女で県内者と県外者が半数ずつ。異分野からの就学が目立つという。現在、来年 4 月にスタートする2期生を募集中。同社は「卒業生の地元農業法人への就職率を高めるだけでなく、その後のサポート体制を充実させて定着を促し、担い手を長期的に育てたい」とビジョンを描く。

(問い合わせ)
㈱マイファーム みらい農業学校運営事務局
TEL:0244-32-1145
HP:https://myfarm.co.jp/

講師(右奥)から稲の苗について講義を受ける受講生
雇用就農者育成に特化したみらい農業学校の1期生