上写真/山本さんの背後にあるのは1970 年に国内初、世界でも2 番目のミリ波電波望遠鏡として完成した「6 ㍍ミリ波電波望遠 鏡波電波望遠鏡」。1988 年に三鷹をはなれ、その後はいくつかの場所で活躍した後、現役引退後に2018 年10月に三鷹 に戻って展示されることに。電波天文学を学ぶ人にとっては憧れの存在として一目置かれている望遠鏡
東京都三鷹市にある国立天文台 三鷹キャンパス。敷地は約26万平方㌔㍍と広大で、春には桜や新緑、秋には紅葉を楽しむことができる。まさに大都会のオアシスだ。かつて国立天文台の本部として、最先端の装置による天体観測が盛んに行われていたこの施設は現在、「国内外の国立天文台の観測施設の統括と天文学研究、新しい観測装置の開発、大学院生の教育」などの拠点となっている。また、2000年には一般見学の受け入れがはじまり、天体観測の遺構や最新の研究成果などの展示を見学することができるほか、宇宙旅行を疑似体験できる施設も。国立天文台 三鷹キャンパスはまさにTAMAのお宝なのだ。さっそく、山本さんとともに紹介したい。
『コロンブスTV』 東京多摩ぶらり旅 案内役 山本哲也
1956 年山口県萩市出身。中央大学法学部を卒業後、80 年にNHKに入局。長年にわたりエグゼクティブアナウンサーとして活躍してきた経験豊富なメディアパーソナリティ。現在はフリーアナウンサーとして、NHK の『小さな旅』『ラジオ深夜便』に出演するかたわら、大学でコミュニケーション論の教鞭をとるなど多方面で活躍中。
かつての天体観測の技術を見学できる「第一赤道儀室」
まず山本さんが訪れたのは第一赤道儀室、国立天文台 三鷹キャンパスでもっとも古い建物だ。赤道儀とは、天体の動きを日周運動に合わせて追跡・観測できるようにした天体望遠鏡の架台のこと。特任専門員の石川直美さんによれば「1938年から98年まで、ここで熟練の観測者たちが太陽黒点の観測や太陽全体の写真撮影を行い、そのデータを世界に提供しつづけた」という。
室内に入ってみると、そこには口径20㌢㍍の屈折望遠鏡が。「速度調整機構付重錘式時計駆動」という錘を利用した仕掛けによって、なんと電気なしで最長約1時間半の天体追尾ができたそうだ。石川さんにその仕掛けを実際に動かしてもらった途端、山本さんはその動きに感動し、「まさに世界の天文学研究の歴史がここにある!」と声をあげていた。三鷹キャンパスの敷地内には、この第一赤道儀室のようにかつての天体観測の技術を今に伝える貴重な施設や設備、装置などが各所にあり、計10件の建造物が国の登録有形文化財となっている。いずれも必見だ。
ユッタリ散歩で太陽系のスケールを体感‼ 「太陽系ウォーク」
つづいて、第一赤道儀室の前に伸びる「太陽系ウォーク」へ。これは太陽系の太陽から土星までの距離を140億分の1、天体のサイズを14億分の1に縮めて表現したユニークな散歩道で、実際には太陽から土星までは14億㌔㍍はなれているが、ここではたった100㍍だ。その起点には、直径1㍍の円形の板で表現された太陽がある。山本さんはまず、この太陽から水星、金星を経て第三惑星の地球の説明パネルをチェック、「太陽から地球まで約1億5000万㌔㍍を一瞬で旅してきましたが、見てください、この地球のサイズ」と指さした先には、9.1㍉㍍の小さな金属球があった。これが地球の14億分の1模型なのだ。さらにすぐ近くの金星のパネルや模型と見比べながら「金星と地球はこんなに近く、大きさもほぼ同じくらいなのに、かたや灼熱地獄、かたや生命に満ちあふれた緑の星。この命運を分けたのは太陽からの距離だったのか」と山本さん。その後は火星と木星のパネルや模型を見ながらユッタリ歩き、数分で太陽系ウォークの終点、地球の9倍以上の大きさの土星に到着した。太陽系の距離や大きさを体感しながら、各惑星の特徴も学ぶことができるので、三鷹キャンパスを訪れた際にはぜひ散策してみてほしい。
宇宙旅行を疑似体験できる!?
神秘的で科学的な動画も好評
「4D2Uドームシアター」
太陽系ウォークの土星のすぐ目の前に、三鷹キャンパスの目玉ともいえる施設「4D2Uドームシアター」がある。地球から見上げた夜空を再現する一般的なプラネタリウムとはひと味もふた味も違うこのシアターでは、天体や宇宙の構造を観客が直観的に体験できるよう「最先端のコンピュータによる3次元シミュレーションデータや観測データを『インタラクティブ4次元デジタル宇宙ビューワー「Mitaka」』というシステムで可視化し、手に取るように目の前に立体映像で再現している」
のだという。
さっそく、山本さんはその世界を体験してみることに。最初は通常のプラネタリウムと同様、天井のドームスクリーン全体に地上から見上げた星空が映写されるが、機器を操作する天文情報センター広報普及員の遠藤勇夫さんの「では宇宙への旅に出発しましょう」の掛け声とともに、まるで観客たちがスペースシップで宇宙空間に飛び上がったかのように地球が一気に遠ざかり、アッという間に目の前に太陽系の全体が広がった。これが4次元デジタル宇宙ビューワー「Mitaka」でつくられた立体映像なのだ。遠藤さんの操作ひとつで、この可視化されたバーチャルな宇宙空間を思いのままに見て回ることができるという。「太陽系のどこに行ってみたいですか」と遠藤さんが山本さんにうながすと、すかさず「土星」をリクエスト。するとドームスクリーンの映像は土星にぐんぐん近づき、その輪の表面にまでズーム・イン。その後、今度は「天の川が見たい」と山本さん。映像は土星から遠ざかり、太陽系からもずっと遠ざかり、銀河系全体を見渡せるところでストップ。と同時にドームスクリーンの映像が切り替わり、何とも美しい動画作品がはじまった。遠藤さんによれば、この作品のタイトルは「天の川銀河紀行」。今、起きている星やガスのふるまい、あらたな星々の形成やその周囲への影響など、多様な構造を描き出したものだという。
上映終了後、「Mitaka」の立体映像や動画作品「天の川銀河紀行」に感動した山本さんは「すばらしい宇宙旅行体験ができた!」と大興奮、「天の川銀河紀行」の制作者である4次元デジタル宇宙プロジェクト専門研究職員の中山弘敬さんにインタビューした。先端技術で最新の研究成果を動画作品で表現するやりがいや制作にあたっての苦労、研究者との連携などについて根ほり葉ほり聞いたほか、中山さん自身のこれまでの人生に踏み込んだ話も。そのあたりはYouTubeチャンネル『コロンブスTV』で配信予定の動画版で紹介しているので、ご覧いただきたい。
さて、4D2Uドームシアターを後にした山本さんはその後、世界各地での国立天文台の研究成果を紹介している展示室、日本最大の屈折望遠鏡がある天文台歴史館、屋外に展示されている6㍍ミリ波電波望遠鏡なども見学、日本の天文学研究のこれまでと現在、そして未来に思いを馳せていた。宇宙や天文学の研究成果を五感で楽しく学ぶことができる国立天文台三鷹キャンパス。敷地内は緑豊かで散策にもピッタリ、TAMAの自然がそこかしこに。この秋、ぜひ出掛けてみてほしい。
※ 4D2Uドームシアターは上映システム更新工事のため8 月から4D2U シアターでの上映は休止中。
再開は10 月頃の予定
国立天文台 三鷹キャンパス
東京都三鷹市大沢2-21-1 ℡ 0422-34-3600
『コロンブスTV』で近日配信予定!「山本哲也の東京多摩ぶらり旅」
東方通信社グループの公式YouTubeチャンネル『コロンブスTV』では、2022 年8 月から東京都商工会連合会 多摩観光推進協議会と連携し、多摩の新しい観光をテーマとした動画を『コロンブス』誌面と連動させて制作・配信してきました。24 年度は元NHK エグゼクティブアナウンサーの山本哲也さんをレポーターに迎え、より「地域」や「人」に密着した「ぶらり旅」番組を制作・配信していきます。その第1弾として本記事で紹介した「国立天文台 三鷹キャンパス」編を近日、配信予定‼ぜひご覧ください‼
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