5年後のキャリアを楽しく具体的に考える仕組み
労働者のキャリア支援を手掛ける㈱BeOneは2024年5月に設立されたばかりの新しい会社で、「人生体験ゲーム」というボードゲームを使ってキャリア形成をサポートするユニークな事業を展開している。このゲームには「仕事」「学習」「愛(家族)」「余暇」の4領域があり、プレイヤーはまずこの4領域への配分を定める(仕事40%、学習10%、愛30%、余暇20%など)。そのうえで「5年後の自分はどうありたいか」を考え、あらためて目標値の配分をきめる。たとえば「5年後は仕事重視から生活重視にシフトしたい」なら、仕事・学習の比率を減らし、その分、愛・余暇の割合を増やすといった具合にだ。
このほか、プレイヤーには白紙のスキルカードが8枚ずつ配られ、領域ごとに得意分野を書き込む。そして、こうした準備がととのったところで、ゲーム主催者は「職場での人間関係に悩む」「異動の内示が出た」「新規事業がはじまる」などの命題を示し、プレイヤーはスキルカードを用いながら5年後の目標を目指してゲームをすすめていく。このゲームは4人~6人が1テーブルですすめるボードゲームであるため、メンバーそれぞれの価値観やキャリア感をたがいに共有できることも大きな特徴だ。
VUCA時代に必要なスキルを双方向で
このゲームを考案したのは、同社の丹羽野真也社長(37歳)と近藤憲取締役(39歳)で、ともに元松江市市役所職員で2022年まで島根県松江市職員ユニオンの役員だったという。「当時、コロナ禍関連の仕事が急増して職場は疲弊しきっていた。そこで、ふたりで同僚支援の一環としてキャリアコンサルタントの国家資格を取得し、最初は職員向けのキャリア研修を実施し、ワークライフバランスの重要性を説いていた」と丹羽野社長は振り返る。そして、講義形式の研修だと一方通行で終わってしまうことがあるため、その効果を高めるツールとして人生体験ゲームを考案。さらに「労働組合所属のままだと研修の対象者が同僚にかぎられてしまうため起業することにした」という。
実際、起業を機に研修先は官民に拡大し、現在は自治体や民間の大手企業など20超の団体のもとで講義を担当するまでになっている。また「現場には基本的にふたりで出向き、ゲームを活用しながら本格的な研修もすすめている」そうだ。また「当社の研修は仕事一辺倒のものではなく、生活も含めたものになっている。この研修を通して、人それぞれの人生の『輝き方』を提供したい」とも。ワークライフバランンスがますます重要になるなか、同社の取り組みはさらに注目を集めることになりそうだ。

㈱ BeOne(ビーワン)
島根県松江市北陵町1
mail:info@beone.ne.jp
設立:2024年 従業員:4名(アルバイト含む) 資本金:300万円
HP:https://www.beone.ne.jp/

楠見拓也さん
(公財)しまね産業振興財団経営支援部 創業・人材支援課
同社は元公務員で、労働組合専従職員としての経験を生かし、現代の変化に対応したキャリアづくりをサポートしています。その結果、日本の働く人々の人生満足度の向上に貢献しています。現在は島根県内外自治体の労働組合からの引き合いが多く寄せられていますが、今後は企業向け研修など、あらたな領域への事業拡大に向け、われわれも支援を継続してまいります。これからの時代に欠かせない企業として注目される存在です。

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