「東京の宝物」といわれている多摩、都心からのアクセスが良く、豊かな自然と特産品に満ちあふれ、ぶらり旅にはもってこいのロケーションだ。東京23区とはひと味違う歴史や文化、観光、産業があり、その一つひとつを掘り起こし、ご案内するのがこのぶらり旅の目的。案内役を務めるのは、NHKの長寿番組『小さな旅』や『ラジオ深夜便』のキャスターとして人気を誇る山本哲也氏。第2回は小平グリーンロードを探検‼
一周すると約21 ㌔㍍の小平グリーンロード。今回はそのうち、小平市北部の西武新宿線小平駅から同じ沿線の花小金井駅を経て小金井公園にいたるまでの約4.5 ㌔㍍(赤線部分)を歩いた

『コロンブスTV』 東京多摩ぶらり旅 案内役 山本哲也

1956 年山口県萩市出身。中央大学法学部を卒業後、80 年にNHKに入局。長年にわたりエグゼクティブアナウンサーとして活躍してきた経験豊富なメディアパーソナリティ。現在はフリーアナウンサーとして、NHK の『小さな旅』『ラジオ深夜便』に出演するかたわら、大学でコミュニケーション論の教鞭をとるなど多方面で活躍中。

真っ直ぐで緑豊かな
散策路を歩く

東京都小平市にある「小平グリーンロード」は、玉川上水緑道と野火止用水、狭山・境緑道、都立小金井公園を結ぶ約21㌔㍍の散歩道だ。地域住民の散歩やウォーキング、ランニング、サイクリングスポットとして親しまれており、道沿いや周辺には農産物直売所やカフェなどの飲食店、貸し農園、収穫体験農園、オープンガーデンなどが点在している。東京都心から電車でわずか30分ほどでアクセスできるエリアに、これほど緑豊かで魅力的な散歩道があるとは驚きだ。

今回のぶらり旅はこの小平グリーンロードのうち、小平市北部の西武新宿線小平駅から同じ沿線の花小金井駅を経て小金井公園にいたるまでの約4・5㌔㍍、「狭山・境緑道」の一部が舞台。山本さんはその出発点に立つや「すごい、どこまでも真っ直ぐですね‼」とビックリ。それもそのはず、狭山・境緑道は多摩湖から境浄水場までを結ぶ水路の上に造られた自転車・歩行者専用道で、途中に何度か車道をまたいではいるが1本道なのだ。見通しがよく緑にあふれ、春には見事な桜のトンネルも楽しめる。

この狭山・境緑道を案内してくれたのが、小平市を中心に活動しているノルディック・ウォーキング倶楽部-歩歩路代表の宮井桂子さん。「ノルディック・ウォーク」とは2本のポールを使って歩行運動を補助しながら運動効果をアップする北欧発のウォーキングエクササイズ。「全身の約9割の筋肉を使うので健康増進効果はバツグン」とのこと。歩き方のポイントなどを宮井さんにレクチャーしてもらってから、いざ出発‼

小平グリーンロードの健康散歩に出発‼
ノルディック・ウォーキング倶楽部- 歩歩路代表の宮井佳子さんに歩 き方のポイントを教わりながらのウォーキング

小平ふるさと村で地域の
歴史と暮らしに触れる

小平グリーンロードを歩きはじめてすぐ、山本さんは道沿いの「あじさい公園」を流れる用水路に目を留めた。聞けば、市内各所に同様の用水路が流れており、すべてをつなぎあわせると48・6㌔㍍にもなるとか。宮井さんによれば「これらの用水路は小平が新田開発にともなって開拓された約370年前、生活用水を確保するため玉川上水からの分水によって造られたもので、現在は親水空間や自然環境の維持、改善などをはかるための環境用水として活用されている」とのこと。

 

市内各所を流れる用水路

しばらく歩くと、そうした小平の歴史と暮らしに触れられる施設「小平ふるさと村」に到着。この村では江戸時代初期から中期の開拓ゾーン、江戸時代中期から後期の農家ゾーン、明治以降の近代ゾーンと3つの時代ごとに古民家などが保管、復元されており、見学することができる。山本さんはなかでも江戸時代中期に建てられた「旧神山家住宅主屋」に注目、炭焼きや養蚕で生計を立てていたといわれる神山家の茅葺き屋根や土間を見て、自身の山口県萩市の実家の懐かしい思い出に浸っていた。

 

小平の歴史と暮らしに触れられる施設「小平ふるさと村」の入口にある「旧小平小川郵便局舎」。明治41年に建てられ、1992年にこの地に移築・復元された
小平ふるさと村の施設のひとつ、江戸時代中期に建てられた「旧神山家住宅主屋」
旧神山家住宅内の土間にて。施設を案内してくれた小平市文化振興財団の野口克彦さんも含め、3人とも農家の生まれということで盛り上がる
「小平糧うどん」。麺は手打ち、うどんの添え物として茹でた地元産の野菜がつく。小平ふるさと村では月に2日ほど、武蔵野手打ちうどん保存普及会が糧うどんを500円で来場者に提供(1日50食限定)写真提供/小平ふるさと村 武蔵野手打ちうどん保存普及会

メキシコ料理の名店で
自家製トルティーヤに舌鼓

道々、小平市ゆかりの彫刻家、齋藤素巖作のブロンズ像を眺めたり、道沿いの野菜即売所を覗いたり、オシャレなカフェ「ラ
ローズ ブランシュ」で休憩したりしながら歩くこと1時間、いつしか道は土手の上に。ここは「馬の背」と呼ばれる場所で、道の下を通る水道施設と石神井川をクロスさせるために盛り土をしたという。「緑に覆われた道もいいけど、この馬の背も見晴らしがよくて最高」と山本さん。

道沿いには野菜の直売所が点在
小平市ゆかりの彫刻家、齋藤素巖(さいとう・そ がん)のブロンズ像が小平駅から花小金井駅の間に16基17作品ある
見晴らしの良い「馬の背」

ひとしきり歩いて小腹が空いたので、今度はいったん小平グリーンロードをはなれ、花小金井駅近くにある宮井さんオススメのメキシコ料理店「タコスメルカド」へ。看板メニューはもちろん、肉や魚、野菜などの具材をトルティーヤ生地で包んで食べるメキシコ料理の代表格「タコス」だ。山本さんはひと口食べるなり「まるで花火のようにいろいろな味が楽しめる。これはうまい」と感激。さらに「具材を包むトルティーヤがまた絶品。とても香ばしいが、具材の味わいを邪魔せずよく引き出している。ぜひこれを作った人に話を聞いてみたい」というわけで、食後に店主の吉川孝一郎さんにインタビューすることに。吉川さんのメキシコ料理の原体験は子どもの頃、東京都練馬区にあったメキシコ料理店「ドミンゴ」で本場仕込みのタコスを食べたこと。「実家の中華料理店で働き出してからもその味わいが忘れられず、思い切ってドミンゴの店主に連絡し、1年間レシピを教わり修行したうえで2019年にこの『タコス メルカド』をオープンした」という。日本ではトルティーヤというと小麦粉が主体のものも多いが、吉川さんはドミンゴの店主が実践していた本場メキシコの製法にならい、原料のトウモロコシの粒を煮たり、すり潰したりと手間をかけてトルティーヤを作っている。このこだわりのトルティーヤが評判を呼び、同店は人気店となっているのだ。

 

タコス・メルカドの絶品タコス
山本さんがタコス・メルカドの吉川さんにインタビュー。吉 川さんは現在、自家製トルティーヤの工場をつくることを計 画中。「この工場から全国に生地を流通させることで、少しでも日本でのメキシコ料理の認知度や地位の向上に貢献したい」と意気込んでいる

広大な小金井公園で
季節の花々を鑑賞

お腹を満たしたところでもうひと歩きし、山本さんと宮井さんは最後に都立小金井公園へ。この公園は小金井市と小平市、西東京市、武蔵野市にまたがっており、80㌶もの広大な敷地は都立公園のなかでも最大規模を誇る。園内で出迎えてくれたコスモスと子福桜を鑑賞し、今回のノルディックウォーキングは終了。「ぜひ皆さんもこの小平グリーンロードを歩いて、自然を体になじませてみてください」と山本さん。秋冬のノンビリ散歩にピッタリ、見所タップリの小平グリーンロード、YouTubeチャンネル『コロンブスTV』の動画版ではより詳しく各スポットの魅力を紹介しているので、ぜひ参考にしてみてほしい。

 

都立小金井公園に到着。コスモス畑がお出迎え

東方通信社グループの公式YouTube チャンネル『コロンブスTV』では、2022 年8 月から東京都商工会連合会多摩観光推進協議会と連携し、多摩の新しい観光をテーマとした動画を『コロンブス』誌面と連動させて制作・配信してきました。24年度は元NHK エグゼクティブアナウンサーの山本哲也さんをレポーターに迎え、より「地域」や「人」に密着した「ぶらり旅」番組を制作・配信しています。本記事で紹介した「小平グリーンロード」編も好評配信中、ぜひご覧ください‼