地産地消にこだわるパイオニア的製麺所

「北海道産小麦粉100%の麺づくり」——。それが登別市にある㈱望月製麺所のモットーである。今でこそ歯切れのよい食感、ツルツルとしたノド越しで知られる同社の麺だが、かつて道産小麦は時間経過で水分が飛び、麺がポロポロ切れるなど製麺には不向きとされていたという。だが、同社は輸入小麦が主流だった30年以上も前から加水や練り時間などに改良を重ねてこうした難点を克服。温度管理や結露防止のノウハウを積み重ね、輸入小麦にはない甘い香りと舌ざわりの麺をつくりあげ、今では受注麺を中心に100種以上の商品を世に送り出している。

たしかに、創業当初は輸入小麦を使用していたが「地元の生産者を応援し、道産のおいしさを知ってもらおうと道産小麦100%の麺づくりに乗り出した」と話すのは望月啓一郎専務(28歳)。現在、製麺にあたっては、道産小麦粉12種、そば粉7種を使っており、ラーメンやうどん、そば、生パスタ、ギョーザの皮など、製品ごとに銘柄・品種を使い分け、製粉メーカーに発注しているという。なかでも「ゆめちから」という道産小麦粉100%の生ラーメンが大人気で、販売店など取引先は約300社余に。その他、「きたほなみ」など道産5種をブレンドした生麺と特注スープをセットにしたオリジナル冷蔵商品「二段仕込み醤油ラーメン」も人気商品。ネーミングで親しまれているのは、まろやかな辛さの「登別閻魔ラーメン」や「室蘭カレーラーメン」などのご当地ラーメン。このように地産地消にこだわる製麺所は全国的に増えたが、同社はそのパイオニアとして圧倒的な存在感を示している。事実、登別温泉のホテル・旅館に納品する麺は施設ごとに配合を変えているというから、そのこだわりは半端ではない。

一方、同社は地域貢献にも精力的だ。6年前にはじめた登別社協デイサービスセンターへの月数回の昼食提供では望月一延社長(60歳)みずから腕を振るい、昨春の登別明日中等教育学校の授業では効率的なギョーザ製造法を教えている。さらに、工場見学の受け入れなどでつながりのあった日本工学院北海道専門学校のDX講座にも全面協力している。

スーパーなどで市販されているオリジナル商品も多数ある
2023 年 12 月にあった専門学校でのDX講座の授業風景

インバウンド需要に応える乾麺開発へ

今後の課題は麺の賞味期限だ。「インバウンドも多く、土産品としてニーズがある乾麺の新商品をつくりたい」と望月専務は意欲満々。すでに常温で賞味期限2カ月の具材つきラーメンの試作品を完成させたそうだが、「もっと商品ラインアップを増やして、当社の麺を通じた幸せの輪を広げていきたい」と目を輝かせる。麺づくりの未来を明るく照らす製麺会社だ。

歯切れとノド越しがよい道産小麦100%の麺
「小麦の種類や配合を変え、納品先のニーズにマッチした麺をつくっている」と望月専務

鈴木雄登さん
興和工業 常務取締役

㈱望月製麺所は道産小麦 100%を原料にした質の高い麺づくりを行う老舗企業です。製麺工場のチームワークがとに かくバツグンで、私はそれが同社のもっとも優れた特徴だと思います。多品種・小ロットのさまざまな注文に対して、工場長の指示のもとで数十名のメンバーが一心となって細やかな麺づくりの工程を分業し、的確に動く様子は見事です。みな、望月製麺所の看板に誇りを持って仕事をしています。