現在、全国約60紙の地域紙と媒体交換・情報配信などを行っている東方通信社。『地域便』ではそのネットワークを生かし、各地の「ご当地ニュース」のなかから注目記事を配信‼ 地域紙ならではの地元密着目線での記事をお届けします。今回の注目記事は11月7日付の『吉野熊野新聞』に掲載された「熊野こどもだいがっこう」の話題。小学生と大学生が寝食をともにしながら、熊野地域の地場産業を学ぶ試みだ。どのような内容だったのか、さっそく取材してみた。
11月2日~4日、熊野市で「熊野こどもだいがっこう」が開かれた。これは熊野商工会議所青年部、三重大学坂本研究室、近畿大学佐野研究室、早稲田大学高口研究室や地元の事業者が連携し、子どもたちに地域の素晴らしさを伝えようと企画したプロジェクトで、参加者は小学4~6年生7人と実行委員のメンバー、学生、教員ら約 40人。2泊3日の合宿形式で、熊野の自然と地場産業を体験しながら学ぶプログラムだ。
初日は熊野市の林業の拠点である熊野原木市場で、製材所経営を疑似体験できるボードゲーム「セーザイゲーム」に挑戦。丸太の競りや製材の木取り、木材製品の販売を体感的に学習した。さらに、実際にどうすれば地域の森林を生かした持続可能な林業、製材業を営むことができるかを大学生と小学生がともに考え、発表を行った。翌日の学びのテーマは漁業。漁港で競りの見学や魚の血抜き体験をした後、地元漁師から熊野の漁業について船上で講義を受け、干物づくりにも挑戦した。最終日は大工道具の使い方を練習し、熊野杉の写真立てを製作。
午後は図面を見ながら実際に本物の木材を使い、二階建ての小屋を完成させた。このプログラムは、熊野のことを研究する大学や団体、地元の事業者が集まり活動報告を行う「熊野サミット」から生まれた。2016年にはじまり、年に1度、熊野についての学びを通して参加者らが交流を深めてきたが「それでは物足りない」と実行委員会代表の野地伸卓氏らが話し合い、「机上だけでなく、熊野の未来のために行動しようということになった」そうだ。
とくに「熊野地域の課題は、進学や就職を機に地元をはなれ、その9割が戻ってこない。こうした状況を打開するために、地元の子どもたちに熊野の魅力や産業を伝える活動をしていくことが重要だ」ということに。今回、参加した子どもたちからは「来年も参加したい」という声があがり、保護者からも感謝のメールが寄せられ、イベントは大成功。「手弁当で行っているので、今後は協賛企業なども募りたい」と野地氏。熊野の未来へと大きく前進した3日間となったようだ。
吉野熊野新聞
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☎0597-89-4611
1959年創刊 発行部数8000部
三重県熊野市・尾鷲市・新宮市・御浜町・紀宝町を主エリアとする。
月刊『コロンブス』1月号 絶賛発売中!
本記事は地域における〝産業栽培〟をテーマとした月刊『コロンブス』1月号に掲載されています。ぜひご一読ください。