強靭な経営基盤を持つ道東エリア唯一の橋梁メーカー

㈱釧路製作所は橋梁を中心に各種タンクやクレーンなどの鋼製構造物の設計・製作・施工を行っているモノづくり系企業だ。とくに橋梁では支間長の長い橋などに強みがあり、寒冷地で凍害が懸念される北海道において社会インフラ、生活インフラを担う要として大きな存在感を示している。たとえば、昨年12月22日、道東自動車道の阿寒IC-釧路西IC(延長17km)が開通し、釧路と札幌が高速道路で直結したが、このうち釧路西ICのDランプ橋  、Cランプ橋を製作したのが釧路製作所だ。「鋼橋製作はほぼ公共工事であり、現在社内事業の多くを占めているが、年々その発注量は減少している」と羽刕洋社長(62歳)は話す。

会社が生き残るためには公共事業ばかりに依存できないと考え、「今ある技術を転用し、水門事業や工場クレーン、需要増のLNG(液化天然ガス)タンクなど民間事業に販路を拓げ、鋼橋製作のシェアを少しずつ減らしてリスクを分散したい」と羽刕社長。

約 9000㎡の広さで充実した設備を誇る本社工場
開通したばかりの道東自動車道・釧路西ICのDランプ橋

「挑戦」をスローガンに100年企業を目指す

そして「挑戦する企業」を掲げ、鋼橋製作技術を応用した航空宇宙事業にも参入をはたした。キッカケとなったのは若手社員が北海道経済連合会主催の「宇宙で変わる北海道の未来」セミナーに参加したことだったという。そのとき、堀江貴文氏らの話を聞き、18年には宇宙開発関連の主要拠点として国内外から注目される道東・大樹町にあるインターステラテクノロジズ㈱の燃焼実験架台の製作を受注。「地上設備などの大きな鋼構造物製作は得意」と羽刕社長。22年11月にはロケット部品製造も視野に入れ、航空宇宙関連の国際認証JISQ9100を取得。また、昨年12月には小型人工衛星の推進燃料を開発する北海道大発のスタートアップ「Letara(株)」(札幌市)に出資し、側面支援にも乗り出した。「2、3年後には航空宇宙関連の社内事業シェアを2割にしたい」と羽刕社長は意欲的だ。

こうした事業を推進するにあたって、羽刕社長はつねに地域経済を意識しているという。「釧路の基幹産業だった石炭・漁業・紙パルプは衰退したが、培われた技術や経験は残っている。率先して挑戦する姿を見せ、地域全体を盛り上げながら北海道 100年企業を目指していきたい」と。強靭な経営基盤を生かしながら、地域の未来を牽引する企業である。

「困難もチャンスと思って前向きに立ち向かってきた」と話す羽刕社長
本社内にはかつての石炭産業を牽引したSL機関車も保存されている

宮下茂樹さん
釧路商工会議所総務部

㈱釧路製作所は道東エリアで唯一の橋梁メーカーです。時代の変化に応じてさまざまな事業に挑戦し、近年、道内でも注目が高まる宇宙事業にも取り組んでいます。社内 DXも精力的にすすめており、そのノウハウを商工会議所や自治体、他企業にも公開することで、地域全体の底上げにも貢献しています。冬のイベント「くしろウィンターパーク」では、子どもたちが楽しみにしている氷のスライダーの設計・製造を協賛という形で提供いただきました。貴社の挑戦しつづける姿勢を私たち市民は誇りに思います。今後のさらなる活躍を楽しみにしています。