ロシアによるウクライナへの全面侵攻が開始されてから3年が経つ。ドナルド・トランプ米大統領は就任前からこの紛争の早期終結を目指すとしてきた。ウクライナ国内では和平へ向けた期待が高まっているが、もしロシア優位で停戦となれば、ロシアはますます強気にNATO(北大西洋条約機構)諸国への軍事挑発を行うことになるだろう。「世界の火薬庫」と呼ばれる中東のパレスチナ自治区ガザでは1月19日、約1年3カ月にわたり交戦をつづけてきたイスラエルとイスラム組織ハマスがアメリカの圧力の下で6カ月の停戦に合意した。ガザの戦後復興まで見据えた長期的な枠組みだが、イスラエルでは極右勢力が猛反発し、ネタニヤフ首相も戦闘を再開する可能性に言及しているという。ウクライナ、ガザ情勢ともに今後の動向は未知数であり、予断を許さない緊張状態がつづく。一方、東アジアでは北朝鮮による核ミサイル開発が加速しており、台湾海峡と南シナ海で中国軍による挑発行動も激化、3期目に突入した習近平主席は「台湾統一はかならず実現する」と明言している。トランプ新政権の政策いかんで多国間での対中抑止力が弱まる可能性もあり、台湾有事のリスクがこれまで以上に高まっている。有事が現実のものとなれば沖縄県、とくに先島諸島の住民は避難を余儀なくされるが、観光客含め12万人といわれる避難民の輸送方法や避難先での暮らしなど課題は山積みだ。それだけではない。日本は原油の9割を中東からの輸入に依存しており、うち8割はマラッカ・シンガポール海峡から南シナ海を経由して輸送されている。台湾有事でこのシーレーンの安全が確保できなくなれば、輸送航路の変更で莫大なコストがかかり物価は今以上に高騰、日本全体に大きな経済的打撃が及び軍事的緊張を生むことに。
こうしたなか、日本はどのように立ち回ればよいのか。「保護主義」「自国第一主義」を掲げるトランプ新政権がスタートした米国との同盟関係を維持し、クアッド(日米豪印)などの多国間連携で海洋安全保障を強化し、つねに地政学的に対峙してきた中国、北朝鮮、ロシアと外交で渡りあううえで何が必要か、そのひとつが防衛力である。外交は抑止力としての軍事力があってこそ成り立つ。そしてそれを支えるのが「防衛産業」だ。が、日本はこの肝心の防衛産業の基盤が脆弱であり、利益率が低いことなどから大手、中小企業ともに撤退や事業縮小が相ついでいる。防衛省はこの現状を打開しようと防衛関連予算を増強、防衛産業基盤の強化に向けて中堅・中小企業やスタートアップの参入促進に力を入れているが、課題も多い。はたして日本の防衛産業の躍進は可能か、どういった企業が参入に乗り出しているのか。さっそくみていきたい。
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