海で使える再生可能エネルギー装置を開発
プラスチック加工の㈱温品は、本業を生かす新事業として波力発電設備の開発に乗り出した。この設備は直径1.5mの浮き輪のような円形のガードと、その中心に据えられたタービンから成る。これを海面に浮かべ、波のうねりを利用してタービンを回し発電する仕組みだ。円形ガードも、タービンを収納する機器も素材はプラスチックの一種、ポリ塩化ビニールの加工はお手のものだ。
温品公志社長(58歳)の弟で広報を担当する専務取締役の佳之氏(51歳)によると、開発のキッカケは港湾職員OBから海で使える再生可能エネルギー装置の製造を持ちかけられたことだったという。「設備は開発段階でまだ発電量が少なく、実用化にはいたっていないが、将来的には漁業施設の照明のほか、養殖場の魚の様子を検知する水中センサーなどの用途が期待できる」と話す。
円心の収納機器の上に太陽光パネルを載せ、太陽光発電とミックスさせて発電量の向上と安定化をはかることも検討中だ。「太陽が顔を出しているときは一般的に波の動きはおだやかで、反対に太陽が雲に隠れているときは荒天でうねりが大きいため、太陽光発電と波力発電がおたがいを補完しあえる」と、さらに改良をすすめているという。
国全体でプラスチック問題に取り組むべきという意識
本業のプラスチック加工では、創業から60年以上の実績があり、技術者がプラスチックの特性をスミからスミまで熟知していることが最大の強み。佳之氏の話では、プラスチックを専門に扱う大学などの研究機関は非常に少なく、プラスチックに関する知見は産業界が断然リードしているという。
「たとえば薬液タンク製造の注文を受けたとして、タンクのどこの部位にどれだけの水圧がかかるかが私たちにはわかるので、『この部位の強度を増したほうがいい』と逆提案し、顧客の要求水準を上回る製品を提供することができる」と胸を張る。製品は完全オーダーメイドの受注生産で「主力製品がないのが主力」といい切るほど多種多様だ。
プラスチックは人々の生活に溶け込んでいる必須素材だが「長期間、自然に返りにくく環境によくない」とネガティブな指摘を受けることもある。佳之氏はそれに対し「プラスチックの処理、リサイクルはもはや業界だけの問題だけでなく、国全体の問題として考える必要がある」と訴える。こうした意識が冒頭の波力発電設備の開発に結びついたのだ。

(株)温品
東京都板橋区板橋1-6-11 TEL:048-449-8848(戸田工場)
創業:1959年 従業員:6名 資本金:1000万円
HP:https://nukushina.co.jp/

生田直也さん
(公財)板橋区産業振興公社
板橋区中小企業サポートセンター
㈱温品はプラスチック加工事業を主に手掛けていますが、その技術を活用した製品開発を行い、さまざまなエネルギーを使った発電などにもチャレンジしています。大学とも積極的に共同研究を行い、画期的な技術を開発しています。弊社と共同で展示会「脱炭素経営 EXPO 春」に出展した際には、波エネルギーを活用した発電を紹介し、多くの来場者から興味を持たれていました。技術力・行動力を生かしたさらなる事業展開に要注目です!

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