第6回は東京都奥多摩町、〝東京の水がめ〟といわれる小河内貯水池(奥多摩湖)と水道水源林へ。東京都水道局の案内で現地の森を歩き、間伐ボランティアにも参加した山本哲也さん。はたして水源林の役割とは何か、あわせて奥多摩の自然の魅力をお伝えしたい。

東京都が1日に供給できる水道水の量は最大約680万立方㍍。その水源のうち2割は多摩川水系が担っており、なかでも最大の水源が都下奥多摩町の小河内貯水池(奥多摩湖)だ。ここに貯えられた水はダム直下の多摩川第1発電所で発電に使われた後、多摩川に放流され、小作取水堰(下流約34㌔㍍)と羽村取水堰(下流約36㌔㍍)で水道原水として取水されるほか、村山・山口貯水池、玉川上水路などを経て東村山などの各浄水場に送られる。さらに小河内ダムは東京都の独自水源として、利根川水系の渇水時や事故時に放流量を増やすなど、安定給水の確保に重要な役割をはたしている。
では、この小河内ダムの水がどのように育まれているのかを知りたい――、ということで山本さんは、東京都水道局が2006年から実施している「水源林ツアー」(奥多摩町)と同じコースを歩いてみることになった。

1957 年に完成した小河内ダム。高さ149 ㍍、長さ353 ㍍ ※ 提供:東京都水道局
水道水源林の地図

雨水を貯め、土砂の流出を抑え、水を浄化する水源林

 

JR奥多摩駅からバスで約15分のところにある小河内ダムの畔の「奥多摩 水と緑のふれあい館」で出迎えてくれたのは、東京
都水道局水源管理事務所技術課長の笛木志穂さん。笛木さんによれば、水道水源林は奥多摩町と山梨県の甲州市、丹波山村(たばやまむら)、小菅村にまたがり、その広さはなんと2万6000㌶、国内の水道事業体が管理する森林としては最大規模だという。今回は、散策路「ふれあいのみち 小河内ゾーン」を約1時間かけて歩き、この広大な水道水源林と貯水池の役割を学ぶ。
さっそく「奥多摩 水と緑のふれあい館」を出発し、散策路を歩くこと数十分で、標高600㍍ほどの八方岩展望台に到着した。ここで小河内ダムの雄大な景色を眺めながら、水源林には「土のなかに水を蓄え徐々に流す『水源かん養機能』と雨が降ったときに木や下草の根が土の流出を防ぐ『土砂流出防止機能』、雨水が土中に浸透する過程で汚れが取り除かれる『水質浄化機能』がある」と笛木さんが解説。

小河内ゾーンではオオモミジ、イロハモミジなどさまざまな種類のモミジがあ り、秋の紅葉の時期はとくに絶景。また、春はサクラの名所としても有名。東京 都水道局水源管理事務所技術課長の笛木志穂さんが道々、解説してくれた
八方岩展望台で素晴らしい眺望に感動する山本さん

展望台の先にはヒノキ林が。「この水道水源林は120年以上前から東京都が所有・管理してきた。人工林では間伐や枝打によって日の光が適度に入るようにしているほか、下草を丁ねいに刈ることで木々の生育に最適な環境を保っている」(笛木さん)という。こうした話を聞いて山本さんは「雨水を貯め、土砂の流出を抑え、水を浄化してくれる水源林はまさに小河内ダムに欠かせない存在。この森を長年、管理してきた努力のおかげで、われわれ都民の水がめが維持されているのですね」と感心し
ていた。
ヒノキ林を抜けると、小河内ゾーンで一番高い場所( 標高680㍍)に到着。ここであらかじめ水筒に入れてきた奥多摩の水を飲んでひと休みしてから、山を下って小河内ダムまで戻り、今回の散策は終了となった。
東京都水道局では、このような水源林ツアーを毎年数回、実施している。「多くの人に森と水のつながりを体感してもらい、水源林を守る大切さを知ってもらいたい」と笛木さん。今秋のツアーの募集は「水道水源林ポータルサイトみずふる」で9月
30日からはじまるそうなので要チェックだ。この秋、奥多摩の見事な紅葉や小河内ダムの景観を眺めながらハイキングを楽しみ、水道水源林について学んでみてはどうか。

水道水源林は、120 年以上前から東京都水道局が管理してきた
小河内ゾーンでもっとも標高の高い場所にて。「奥多摩 水と緑のふれあい館」のウォーターサーバーで入れてきた冷たい奥多摩の水を飲んで疲れを癒す山本さん
「奥多摩 水と緑のふれあい館」で食べられる「小河内ダムカレー」、見事に小河内ダム の景観が再現されている。1日限定20 食、1400 円(税込)

水源地を守る活動に参加し間伐作業をみずから体験

 

東京都民の水がめを支えてきた水道水源林だが、一方では課題もある。たとえば、多摩川上流域には手入れの行き届いていない民有林も多く、土砂流出による小河内ダムへの影響が懸念されている。こうした状況を打開しようと、東京都水道局が2002年に立ち上げたのが多摩川水源森林隊だ。1000名以上のボランティア隊員が登録し、所有者の同意を得て民有林の間伐や枝打、道づくりなどを行っている。
山本さんはその活動の様子を見てみようと、ふたたび水源地へ向かった。当日、多摩川水源森林隊の事務所に集まった約10人のボランティアたちに同行して、指導員のサポートを受けながら間伐作業を体験した。作業を終えてヘトヘトになりながらも「自分自身で実際に木を伐り倒してみて、伐採する木の選定から伐るための準備、倒れる方向の調整などさまざまな手間と技術が必要だとよくわかりました」と話していた。これらの作業の様子は『コロンブスTV』でも公開中なので、ぜひ視聴して
みてほしい。

ヘルメットやノコギリ、地下足袋などを森林隊事務所で借りて間伐ボランティアに臨む 山本さん
山本さんも間伐作業に挑戦
『コロンブスTV』で公開中の動画では、山本さんがボランティアとして参加した東 京農業大学の学生などにもインタビュー

さて、最後に山本さんがやってきたのは多摩川の上流部の河辺。ここで、フライフィッシング用のバンブーロッド製作者である宮崎俊太さんと出会い、多摩川への思いを聞くことができた。宮崎さんにとってこの多摩川や川沿いの自然はいわば故郷。「母の出身地がこのあたりなので、子どもの頃は多摩川が最高の遊び場でした。それに、この水辺環境があったから
こそ自分はバンブーロッド製作者という生業を選ぶことができた。これからもこの環境にはずっと変わらないでほしい」と話していた。東京都民の水がめを支える水道水源林の仕組みを知り、水源地を守る活動に参加し、その水源地が育む水辺の自然を愛する人の話を聞いた山本さん。多摩川の清らかな流れをしみじみ眺めながら、「奥多摩の水を守るためにいかに皆が森を大切にしているかがよくわかりました」と話していた。

月刊『コロンブス』の公式YouTubeチャンネル『コロンブスTV』では、今回の「奥多摩水源地編」の様子をより詳細に動画でお伝えしている。ぜひ合わせてご覧いただきたい。