売上95%がおろし金関連、チタン製おろし金の開発にも成功

新潟県の「燕三条」エリアは、刃物や金物、洋食器の一大産地。その技術力とデザイン性は世界でも評価されている。なかでも、近年、プロの料理人からも絶賛されているのが㈱ツボエが製造する「極上おろし金」だ。

同社は1907年に、ヤスリ工場として燕市で創業。主に建築現場で使われるノコギリ用ヤスリを製造し事業を拡大。1970年代半ばには、商社の依頼で開発した建築工事用特殊ヤスリが累計150万本超えのヒット商品となる。

しかしその後、木造住宅の減少と工具の機械化により、ヤスリの需要は下降線を辿る。そこで80年代半ばにあらたに参入したのが食品加工や調理に使われる「おろし金」の市場だった。4代目の笠原伸司社長は「ヤスリはタガネという鋼鉄の刃が付いた特殊な道具を使って、金属版に無数の小さな刃(目)を刻んでつくる。ここで培った技術をおろし金の製造に応用したのが先代社長だった」と話す。

間もなく専用機器を導入し、銅製やステンレス製などのおろし金の量産化をはじめ、90年代前半には、難加工材であるチタン製おろし金の開発にも成功した。そのほか、大型業務用フードプロセッサーのおろしプレート、特殊機械のおろし刃部分の設計・製造も手掛けるように。「職人の手作業による目立ての精度を機械で再現することに成功した。抜群の切れ味が評価され、一般家庭用のOEM製品から業務用の部品まで、幅広いメーカーから注文をもらっている」とのこと。現在、売上の95%がおろし金関連で、残りの5%が特殊ヤスリだ。

プロの料理人も絶賛する「極上おろし金」3 種
長年培ってきた技術が注がれたおろし金は、機能美に優れている

おろし金の可能性を追求!

そんな同社が2019年に販売開始したのが「ツボエの極上おろし金箱‐hako‐である。耐久性とメンテナンス性に優れた1.5mm厚のステンレス鋼を使用。通常のおろし金に採用されている2方向の刃に対し、4方向に対応した独自開発の「クワトロ刃」を採用することで、快適な使い心地を実現した。「これを使えば、口当たり滑らかでキメ細やかなフワフワとした食感の大根おろしができあがる。当社の技術の粋を集めた一品で、1万円を超える価格も話題を呼んで大ヒットとなった」と笠原社長。21年にはワサビ用とショウガ用の「ツボエの極上おろし金」も発売し、こちらも好評を博している。

「現在は、外国人と若い女性をターゲットとしたirogamiブランドの開発に注力している。おしゃれなデザインと豊富なカラーバリエーションが特徴で、海外ではチーズおろしとしても使用されている。今後、地元「燕三条」の工場とも連携して商品ラインアップを充実させ、どんどん海外に売り込んでいきたい」と笠原社長は意欲満々だ。

「irogami」はおしゃれで豊富なカラーバリエーションが魅力
海外展開にも力を注ぐ笠原伸司社長

宮川龍之介さん
(公財)にいがた産業創造機構
マーケティング支援グループ
海外展開支援チーム

ツボエさんは、ヤスリ製造を祖業とし、おろし金などのキッチンツールは独自のブランディングに成功しています。笠原社長自身が海外展示会へ積極的に参加し、現地のニーズを的確に捉えることで、商品開発を可能にしていると感じます。デザ インやパッケージの細部にこだわり、おろし金をギフト商品にしたことは革新的です。「irogami」ブランドにはさまざまな商品を加えていくそうで、今後の展開に期待しております。