受け継いだ竹林で、障がい者が安心して働ける場所をつくる

人の手が入らず、伸び放題の竹が周辺の土地を圧迫する放置竹林。地域の厄介者になった竹を〝地域の宝〟に変えようとするスタートアップ企業が三重県桑名市にある。㈱まるしげは、昨年12月に社長の竹尾滋展氏(42歳)が一人で立ち上げた企業。地元の経営相談所、三重県よろず支援拠点くわなサテライトの担当者は「竹を通じて地域の課題を解決しようとする意気込みと将来性を感じる」と期待する。

桑名市出身の竹尾氏は航空機メーカーの協力会社で20年、航空部品の設計や製造の仕事に携わってきた。民間旅客機の燃料タンクの製造にかかわったこともある。

2年前に親族の付き添いで訪問した障がい者施設との出会いが、事業立ち上げのキッカケに。「一生懸命に食品を作る人たちの姿に胸を打たれた。障がい者が安心して働ける場所をつくりたいと心から思った」

決意してから行動に移すまで、時間はかからなかった。障がい者施設訪問の翌年には、会社を退職。2024年に㈱まるしげを立ち上げるも、具体的な事業内容はきまっていなかった。地元の商工会議所にある経営者向け相談所「よろず支援拠点」に通い、事業案を探った。竹尾氏は「桑名市の地場産業の鋳物を使った商品からキクラゲ、シイタケの栽培などさまざまな事業が浮かんだが、初期投資が大きすぎたり、知見不足だったりして1年くらいきまらなかった」という。そして最後によろず支援拠点の担当者からいわれたのが「今、竹尾さんにあるものは何ですか」という問いかけだった。

当時、竹尾さんは父親から所有する竹林の名義を譲りたいという相談を受けていた。「そうだ、自分には代々受け継いできた竹林がある。これこそ自分の資産だ。点と点がつながった気がした」と振り返る。

「竹活用を通じて地域課題の解決に貢献したい」と意気込む竹尾滋展社長
竹林管理のため伐採した竹が食材などの材料に生まれ変わる

竹を活用した循環型ビジネスのモデルケースに

竹尾さんはあらためて竹の特性を研究。育ち過ぎたタケノコはメンマに加工。3~4年目の若竹は粉末して土壌改良に使う竹パウダーになる。消臭効果が期待できるため、4年目以降の竹はペット用のペレットに活用できるなど、竹の特性を生かした活用方法を考えていった。

現在は、オーツ麦に粉砕した竹を練り込んだグラノーラ(シリアル)を製造。インターネットで販売している。今後、タケノコやメンマの生産もはじめる予定で、タケノコは地元小中学校の給食の食材として提供することも考えている。5年後には、小規模工場を新設し、念願だった障がい者や地域のお年寄りが働ける場所をつくる予定だという。竹尾さんは「竹は5年目までは光合成で酸素を放出するが、それ以降は二酸化炭素を出すといわれている。放置竹林は見た目だけではなく、気候温暖化の観点からも適切な管理が必要。まるしげの取り組みが契機となって、全国で竹資源を活用した循環型ビジネスが広がることを期待している」と話す。

竹のパウダーを練り込んだ グラノーラ
成長したタケノコはカットしてメンマに

立道和久さん
三重県よろず支援拠点くわなサテライト
コーディネーター

桑名市には竹林がたくさんあります。価値を生まない放置された竹林は、違法に開発されたり廃棄物を不法に投棄されたりして問題化しています。これは全国的な問題でもあります。竹に価値を与えるため、竹粉を使ったグラノーラやおいしい純国産メンマを作るのが、㈱まるしげです。今後は食料品だけでなく消臭剤などの開発・製造を行い、日本中の社会課題を解決していくことに期待しています。