2050年のカーボンニュートラル達成に向け、再生可能エネルギーの導入を加速させている日本。資源エネルギー庁の「2023年度エネルギー実績」によれば、再生可能エネルギーの発電割合は全体の22.9㌫で、なかでも割合が大きいのが太陽光発電(9.8㌫)だ。
平地面積あたりの太陽電池設置率は実は世界第1位と健闘しているが、国土の狭い島国ゆえに大規模な発電施設を設置できず、発電割合の伸びには限界がある。また昨今、太陽電池の世界シェアは中国メーカーがほぼ独占状態であり、これでは日本が自国主導でカーボンニュートラルを推進していくことは難しい。
こうしたなか、日本発の「ペロブスカイト太陽電池」がガ然、注目を集めている。2000年代に桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授が開発したこの次世代太陽電池は従来のシリコン製太陽電池にない「薄さと軽さと柔軟性」を備え、屋根だけでなく窓や曲面の壁、車両などへの設置も可能。長年の研究開発を経て社会実装も視野に入ってきており、先の大阪・関西万博でもバス停の屋根の曲面に250㍍にわたって積水化学製のペロブスカイト太陽電池が実証実験で設置され「薄くて軽くて曲がる太陽電池」として話題になったばかりだ。
製造コストはシリコン製の2倍以上かかるのが現状だが、メーカー各社がさらなる発電効率の向上とコストの低減に取り組んでおり、普及に向けて期待が高まっている。しかも、日本は主要原料のヨウ素の世界的な産地であり、国内生産を目指せる可能性もある。
エネルギー自給率の向上とカーボンニュートラル達成のカギといわれるこのペロブスカイト太陽電池、はたして一大産業として日本の経済成長の起爆剤となるのか。その現状と可能性を探ってみた。


