※ 本記事は「愛知県豊田市が過去に例のない5億円規模のSIB( ソーシャルインパクトボンド)事業に挑戦!!」の続きです。
フードデリバリー×共食サービス
「じーばーイーツ」
「じーばーイーツ」は、地域の飲食店の弁当などを高齢者のもとに届け、スタッフが一緒に食事と会話を楽しむボランティア活動だ。代表の村瀬麻衣氏が介護福祉士として働くなか、「ひとり暮らしの高齢者の『孤食』を解消できないか」と思いついたサービスだという。構想を実践するにあたって資金面をどうするかが課題だったが、SIB事業のことを聞いて市に相談し事業化に挑戦。いざはじめてみると「地域の飲食店にはコロナ禍を機にテイクアウトをはじめたところも多く、あらたな客層にリーチできるというメリットもあって多くの店舗が協力してくれたし、複数の地場企業が主旨に賛同し協賛してもらうことができた」という。
登録利用者は現在のところ5人。数こそ少ないがサービスは好評で、なかには「以前は家にこもりきりで趣味も何もなかったが、1年間利用しつづけたことで料理教室で料理を習って自炊するようになり、子どもたちの見守り活動にも参加するようになった」という人も。「公的サポートあってこそ実践できる取り組みであるため、SIBならではのメリットを活用しながら末永く継続していきたい」と村瀬氏。登録しているボランティアスタッフは28名と層が厚いので、今後も地域の高齢者の孤食を防ぐインフラとして機能していきそうだ。
ドローン体験は社会参加や認知症予防にピッタリ
「一般社団法人ドローンチーム Nadeshiko」
今や本格的な空撮や災害調査、インフラ点検などに活躍し、いずれは物流業界にも革命を起こすといわれているドローン。当然、資格取得のための本格的なドローンスクールは増えているが、気軽にドローンを体験できる初心者向けの場が意外と少ないという。市内の写真館に勤め、ドローンによる空撮にかかわっていた汐江満理子氏は「ないならば自分たちでつくってしまおう」と、2018年3月に「ドローンチーム Nadeshiko」を設立。当初のメンバーはたったふたりだったが、「ドローンの操縦をチョッと体験してみたい」というニーズの高まりを受けてドローン教室の参加者、スタッフともにドンドン増加。そして「高齢者の社会参加のキッカケ、認知症予防などにもピッタリなのでは」とピンときた。それが「ずっと元気!プロジェクト」に応募し高齢者向けのドローン教室に挑戦した動機だそうだ。
現在、65歳以上の参加者は12名、毎月1回、1200円(一般は1500円)で通っており、「お孫さんと一緒にドローンで遊ぶことを楽しみにしている人、70代でプログラミングによるドローンの編隊飛行が目標の人など、それぞれのスタンスで気軽に楽しんでくれている」という。ドローン操縦を学ぶには参加者同士のコミュニケーションが欠かせないし、多世代が楽しめるツールでもあるので、介護予防に留まらず、地域コミュニティの活性化にも一役買いそうなサービスだ。
多様なニーズを受け、フレイル予防のための運動教室を実施
「P-BASE」
豊田市内で3店舗のデイサービスのほか、訪問看護サービスなどを営み、約100名のスタッフを擁する合同会社P-BEANS。同社では軽度の要介護者向けの筋力トレーニングやエクササイズを主としたデイサービス「P-BASE 高橋店」を舞台に、従来は休日としていた土曜・日曜日を使って「ずっと元気!プロジェクト」に参加、ほぼ毎週「100歳まで猫背にならないピラティス」「生涯動き回るための筋トレ教室」などの運動教室を実施している。「コロナ禍以後、『家に閉じこもったせいで体力が低下してしまった』と新規でデイサービスに通われる方が一気に増え、これまで以上にフレイルを予防するためのプログラムの重要性を実感した」と話すのは同店チーフの小川将平氏。「ひとりでも多くの高齢者の方に元気になってもらいたいという思いでこの事業に取り組んでいる」という。
なお、同社では「ずっと元気!プロジェクト」のプログラムとしてもうひとつ、「地域の交流館などで月1回、10名以上の参加者を集めてくれたら運動教室を開催します」というスタッフ派遣サービスも実施中。「ニーズが高く、すでに7カ所で定期的・継続的に教室を開催している」とのこと。同社が手掛ける全サービスの利用者は約2000人、そのうち「ずっと元気!プロジェクト」の利用者が約150人を占めているそうで、SIB事業が地域における存在感を高めているようだ。