漁業の町、青森県八戸市の水産加工会社、フードアドバンス㈱が独自のウニの冷凍加工事業に乗り出し、注目を集めている。ウニは漁獲期が4~8月にかぎられているため、1年を通じて安定的に出荷するには冷凍保存が必要だが、冷凍ウニは解凍すると、ドリップ(水分や旨みなどを含む液体)がにじみ出て、品質が低下する。そこで、同社は独自の加工技術を開発し、ドリップの流出を防ぐことに成功。田中大輔社長(41歳)は「生ウニに近い状態で提供できるようになった」と自信を見せる。
「水産物の冷凍加工の可能性を広げたい」と話す田中社長

その独自技術とは、むき身にした生ウニを短時間で湯がいたり、蒸したりするというもの。瞬間的に身の表面を軽く固めて、水分や旨みなどを閉じ込めたうえで、急速冷凍し、新鮮さを損ねずに凍結保存する。「身に熱を加えるとはいえ、あくまで一時的で、解凍したら生ウニに近い状態になる。何度か湯がく温度や時間には試行錯誤があったが、今では100㌫満足のいく水準になった」と田中社長は胸を張る。 主な出荷先はシンガポールや香港といったアジア諸国が中心。これからの数年間、年5~10㌧を輸出していくという。「海外では日本食人気が定着し、すしネタとしての需要が大きいほか、フレンチやイタリアンなど洋食の食材としても重宝されている」と田中社長。利益率が国内向けよりも高いのも魅力で、「今後は生産量を上げるとともに、販路を拡大したい」と意欲を見せる。

さらに、同社ではあらたに「蓄養」事業もスタート。蓄養とは天然の海で3~4年間育ち、「成魚化」したウニを漁獲し、陸に設けた大型水槽に移して1~2カ月間養殖するというもの。「天然で成育する期間が長く、養殖期間が短いのが一般的な養殖との違い。天然の良さを残し、不漁、休漁期でも比較的安定して出荷できる利点がある」と田中社長は話す。現在、同社では天然の良さを維持しながら、養殖期間を伸ばして出荷の安定性を向上させる改良を試みているところだそうだ。

ところで、フードアドバンスはウニ以外にも、イカやイワシ、サバなど地元水揚げの水産物の冷凍加工も手掛けている。「自慢の急速冷凍設備を持ち、鮮度を落とさない品質管理に自信がある。温暖化の影響で漁獲量が減り、鮮魚対応では安定的な出荷が難しくなった今こそ、当社の設備や技術を最大限に生かした〝Fresh Frozen〟の商品を拡げるチャンス」と田中社長。そして「冷凍加工はアニサキスなどの寄生虫を死滅させるなどの利点もあり、安全面でも国内外にアピールできる」と将来性にも手応えを感じている

ウニは洋食でも重宝がられる