岐阜市中心部から一路、東部へ。JR高山本線・長森駅から北へ徒歩16分、県道77号沿いにあるのが「珈琲ゆるりん」だ。北に長良川温泉があり、途中で立ち寄る客が多いのか、市内外のお客が訪れ、午前7時のオープンから人が途切れることはない。その人気の秘密はメニューの内容と価格。安くて豊富なセットメニューが評判を呼び、SNSなどによる口コミが広がっているのだという。

なかでも多くのお客が目当てにしているのが、幟のぼりにも掲げられている「一日中モーニング」。モーニングサービスには7種あり、すべて「サラダ、ゆで卵」付。トーストとサンドイッチの両方が味わえるセット、おにぎり2個の「和モーニング」などメニューも多彩だ。しかも、ドリンクは2杯目から半額になる。もちろん、安いばかりではなく味も上々で、遠方から車を飛ばして来る客も多いそうだ。

ドリンク料金でトーストなどがついてくるモーニングサービスは、岐阜県や隣県の愛知県で有名だが、これほど多くのメニューを揃えているのは稀だ。「私自身もあまり聞いたことがない」と代表の伊藤竜也氏(58歳)は笑顔を見せる。

 

清潔感のある明るい店内。遠方からの客も増え たという
トーストとサンドイッチを両方味わえるセットなど充実 したモーニングメニューが人気の的

そして、このカフェがもうひとつユニークなのが、コインランドリーを併設していること。聞けば、1999年からランドリーの経営をはじめ、2016年からカフェとの併設運営をはじめたという。だが、「当初はランドリーの待ち時間にカフェを利用してもらおうとはじめたが、同じ商圏にカフェやランドリーが増え、徐々に収入が伸び悩むようになった」と伊藤氏。そこで、メニューや原価、客層を分析し直すことに。「当時の客層は60~80代だったが、あらためて40~50代をターゲットにして、岐阜県よろず支援拠点の指導の下で豊富なメニューづくりに着手した」という。そして、コロナ禍による店舗休業後の20年6月、午後の客足を取り戻すために「一日中モーニング」を開始。すると、客の来店時間が分散し、密を避けることにもつながったという。また、ランチに提供するカレーライスや自家生産米を使ったオニギリなどをコーヒーのオプションに切り替えたところ、これも見事にヒット。さらに、店舗外観をアイボリーからブラウンに塗り替え、シャープな意匠に変更すると、「こんな場所に店があったのかと驚く客もいた」という。こうして現在の体制が整った同年10月末から、インスタグラムなどのSNSによる情報発信に努めており、全体の7㌫にすぎなかった40~50代の客層が20㌫にまで急増。売り上げも前年比で200㌫以上アップしたそうだ。

一方で、併設のランドリーについても「ペット専用ランドリー」を導入するなどして差別化をはかっているという。「ゆるりん」という店名に偽りなしの「憩いの空間」が、このランドリー併設型のカフェにはある。

「インスタを利用したためか、40 代から50 代のお客さまが増えた」 と話す伊藤氏