熊本県天草市の㈱サーキュライフは地元産のヒノキの間伐材を使い、「木糸(もくいと)」と呼ばれる繊維糸をつくり、布製品にする事業に取り組んでいる。木糸は間伐材をチップにし、繊維を取り出して糸にしたもの。麻の繊維を混合して和紙状にし、細く切って撚糸(ねんし)として使う。事業初年度の昨年は木糸から生地をつくり、衣服のサンプル品を完成させ、2年目の今年は草木染めの工程に入り、独自の染色技術を編み出して、草木染めによる生地のカラーバリエーションを増やしているところだという。

通常、綿や麻、化学繊維の原料となる石油を含めほとんどが輸入品で占められるなか、「当社は木糸製品を普及させ、輸入に頼らず、環境にも負荷をかけないあらたなビジネスを展開したい」と川原剛社長。また、草木染めでは繊維と色素の付着を分子レベルで強める新しい技術を開発、通常は染料を入れた80℃の湯で30分間煮込まないと色づきしないものを、25℃で15秒間浸すだけで済む水準に改良した。「煮沸時間が短くなり、それだけ燃料と水の使用量を抑えれられる」と川原社長。草木染めは「色落ちが激しい」といわれるが、新技術ではこの弱点も克服したそうだ。

この木糸生地の草木染めは現在、製品化もできており、3月にリニューアルオープンした阿蘇熊本空港のセレモニーで記念品として利用者に配ったところ、大好評だったという。熊本城の桜で染め上げたピンクの手ぬぐいで、原材料には地元の小国杉と天草ヒノキの間伐材を使用したという。

 

自社ブランドも立ち上げた
木糸を通じ、野心的な取り組みに挑戦 している川原社長

今年はこの勢いに乗って製品の自社ブランドを立ち上げ、製造・販売の基盤をつくる。川原社長は「木糸づくりは現在、製造の特許を持っている大阪の業者に委託しているが、将来的には熊本に製造工場を構え、自社生産する」と話す。

資金調達は主にクラウドファンディングを利用、昨年の1回目で目標金額を超える資金を確保したのにつづき、今月にはじめた2回目でも早々に目標額を上回ったそうだ。川原社長は「アパレル産業は全産業のなかでも環境に大きな負荷をかける産業といわれる。材料の調達過程だけでなく、製造過程でも低負荷のビジネスモデルを確立したい」と話している