ギンザのサヱグサグル―プと長野県栄村小滝集落の交流がはじまって10年が経過した。6月15日付の妻有新聞の記事によると、同社はCSR活動を機に集落の生き方に一目惚れし、米の販売まで手掛けることになったという。さっそく取材してみた。

新潟県と群馬県の県境、長野県最北端にある栄村。31の集落に785世帯、1589人が暮らしている。集落のひとつである小滝地区(14世帯、47人)は千曲川沿いに佇む風光明媚な里山だ。この地区には6.5haの水田があり、年間500俵(約30t)ほどの米がとれるが、昨年から全量独自販売を達成している。販売・ブランディングを担当するのは創業155年、銀座の老舗、ギンザのサヱグサだ。

同社と小滝集落との出会いは2013年、CSR活動の一環として子どもたちの野外教育を行う候補地を探していたときのことだった。2011 年3 月12 日に発した栄村を震源とする長野北部地震の発生後、集落の村人たちは復旧・復興に追われながらも、米作りを心とした「300 年後の未来を見据えた里山創り」に取り組んでいた。縁あって小滝を訪れた三枝亮社長(56歳)は、集落が掲げるその目標と熱意に共感、小滝との連携をきめたという。

当時、小滝は集落継続の危機やお米の買取価格の問題を抱えており、三枝社長は米をワインボトルに入れ「コタキホワイト」としてギフト用に販売することを提案、販売とブランディング活動を全面的に担うことに。「当初はすべて社長が米を自費で買い取り、知り合いに声掛けして手売りするところからはじまった。『なんでギンザのサエグサがお米を!?』といわれ苦労したが、お歳暮として使ってもらうなど地道に販路を広げていった」と事業担当の近藤宏彦さん(56歳)。15年にはグループのサヱグサ&グリーンにKotaki Rice&Future事業部を立ち上げ、10月から本格的な販売を開始。老舗ならではのネットワークで徐々に知られるようになり、都会からわざわざ小滝を訪れ、小滝ファンになる人もあらわれるように。「連携から10年、さらに小滝のブランディングを深めたい。まだまだこれからだ」と三枝社長は話している。