被災地における食事の提供は、被災者にとっての最重要事。今年 1 月の能登半島地震でも避難所では炊き出しのサービスが行われたが、自宅にとどまった被災者にはそうしたサービスがあったのかといえば、けっして十分ではなかった。こうした点在する被災者にも食事を提供できるのがキッチンカーだ。機動力があり、すみずみまで配食できると期待されている。

この期待に応えて㈱ Mellow(東京)は 2021 年 7 月に(一社)フードトラック駆けつけ隊を立ち上げ、災害時にキッチンカー事業者とともに被災者に食事を提供する取り組みをはじめた。このたび群馬県とあらたに協定を結び、派遣要請があれば出動可能に。同社のプラットフォームに登録されている全国約 3000 のキッチンカーのうち約 300 台が常時、県の要請があれば出動することになる。その采配や実務は同県内のまきばプロジェクトが担うそうだ。協定の締結式は 6 月に県庁で開かれ、関係者が締結書に調印。県は「これであたたかな食事が提供できる」と期待を寄せる。現在、Mellowは東京都世田谷区など全国 5 市区と同様の協定を結んでいるが、都道府県との締結ははじめて。同社は県の要望を汲み取り、被災状況に応じてキッチンカーを手配する橋渡しの役割を務める。キッチンカー側にとっては出店許可や法的手続きなどをMellow側に委託できるので各自で行なう煩わしさから解放される利点があるという。

一方で今回の防災関連の取り組みで課題になっているのは財政的な手当てだ。食事の提供は基本的には無償で、誰がその費用をもつのか、協定では公的助成を得る仕組みにはなっておらず、Mellow 側、キッチンカー側の負担が増す。同社は「これまではスポンサーや理解者からの資金提供で乗り切ってきたが、こうした取り組みを持続可能なものにするためにも公的助成のありかたを行政とともに考えたい」と話す。

(問い合わせ)
フードトラック駆けつけ隊
TEL:03-6268-9331
https://media.mellow.jp/articles/128

キッチンカー派遣の協定締結式に出席する関係者
実際に提供される食事