国や自治体が結婚を支援する「官製婚活」は、2013年に第2次安倍政権が結婚と出産を促進する取り組みに交付金をつけたことで全国に広がった。近年は自治体と民間のマッチングアプリ運営会社による連携、人工知能(AI)で相性が良いと判断したお見合い相手を紹介する仕組みなど、官民連携の取り組みも増えている。今月号では、富山県市町村新聞(4月5日付)に掲載された高岡地区広域圏事務組合による婚活支援事業に注目。実際にどのようなサポートを行っているのか、さっそく取材してみた。
高岡市、氷見市、小矢部市の3市で構成される高岡地区広域圏事務組合が合同の婚活支援事業をはじめて今年で8年目になる。各団体は「キューピットTAKAOKA」「氷見市縁結びおせっかいさん」「おやべの縁結びさん」でボランティア登録数は今年4月末で67人、出会いを求める登録者は345人となっている。ボランティアたちは毎月1回、定例会を行い、登録者の資料を見ながら相手探しを行うそうで、昨年度のお見合い件数はおよそ100件。「婚活支援を行う自治体は多いが、3市が区域を越えて協力しサポートする地域は珍しい」と話題に。また「広域になったことで出会いの場や幅が広がっている」そうで、登録者からは好評だと同組合の北世晃一さん。
では、実際にボランティアスタッフはどのような意識で婚活サポートにあたっているのだろうか。「キューピットTAKAOKA」の代表・宮崎友理子さん(78歳)は独身時代から人と人をつなぐことが好きで、結婚の仲人役を務めてきた。約40年の活動のなかで宮崎さんの縁で成立したカップルは15組。「縁結びがうまい人もいるが、ただくっつければいいというものでもない」と宮崎さん。「合わないと思ったらサッとはなれ、カップルを成立させることに固執しない」をモットーとし、「強要」や「ムリ強い」をしないのが基本スタンスだとか。事実、先日、40代後半で結婚相手を見つけた女性からは「宮崎さんからこれまで何人か紹介されたが、ムリ強いされなかったのがありがたかった。『自分自身を信じて』という宮崎さんの言葉に支えられた」との声が寄せられたそうだ。
「いつもスタッフには『カップルを成立させることを目的にしてはダメだ』と伝えている」と宮崎さん。実は富山県では女性の自殺死亡率が高いという課題もあり、婚活志望者の女性のなかにもさまざまな悩みを抱える人もいる。スタッフは定期的な研修を受け、学びながらサポートのあり方も模索している。今後は「婚活という枠にとらわれず、社会貢献活動という視点で活動していきたい」と話した。
昨今、結婚という個人的な事柄に行政が関わるのは行き過ぎだ、という声もあるが、ジックリ腰を据えて課題解決に取り組んでいきたい、とキューピットTAKAOKA代表の宮崎さん、とまれ、行政を巻き込んだ縁結び活動の広がりに期待したいところだ。
富山県市町村新聞
TEL:076-431-1931
創刊1953年 発行部数3000部
富山県内を主エリアとする。
HP:http://www.shichoson-shimbun.jp/
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