警察庁によると、国内のサイバー犯罪は 2004   年から増加の一途をたどっており、22年には 1 万 2000 件を超えた。こうしたなか、多くの国立専門学校が日頃から IT 関連の授業を受けている教育環境を生かし、社会 貢献としてサイバーセキュリティ人材育成事業に取り組んでいる。鹿児島県の鹿児島工業高専もそのなかの 1 校で、毎年、学生が地元の警察からサイバー防犯ボランティ アの委嘱を受け、県内の小中学校の児童・生徒を対象に情報リテラシー関係の出前授業を行なっている。

同校の取り組みは  19  年にスタート。これまで 16 人の学生が委嘱を受けており、今年は電子制御工学科 2 年生のふたりが 8 月に鹿児島県警から委嘱状を交付された。出前授業はおおむね 2 カ月に 1 回のペースで実施、毎回 4 ~ 5 人の学生が小中学校に出向いて講義する。講義では「米アップル社の創設者のスティーブ・ジョブズは『ネットには中毒性がある』と自分の子どもには端末を与えなかった」といった逸話を織り交ぜて、サイバーセキュリティ被害について話すそうだ。主眼は小中学生が自分で考えてくれること、だと。「学生と小中学生は年齢が近くて話題に共通性があり、興味深く耳を傾けてもらっている」と話すのは担当教員の福添孝明氏。「学生にとっても小中学生に説明することで自分の理解度も深まる」と手応えを感じている。

ただ、学生自身の学業があるため出前授業の機会が限られているのが課題となっている。そこで目下、同校はソフトバンク社と連携し、人型ロボットのペッパーくんのバーチャル版を用いて学生と同様に講義可能とするプランをすすめている。鹿児島県は離島が多く、情報リテラシー教育が行き届きにくいといわれるなか、同校の取り組みは離島の教育機会の不十分さを埋める立派な地域貢献といえる。

(問)鹿児島工業高等専門学校
TEL: 0995-42-9000

情報リテラシー教育の出前授業を行なう学生
毎年9 月は離島に出向く