輪島の被害が甚大
揺れ・津波・火災が街を襲った!

2024年の新年早々に起こった能登半島地震。家屋はなぎ倒され、漁港は隆起で使用不能に。観光地としても知られる輪島朝市通り(石川県輪島市)では大規模な火災が発生し、多くの国民がテレビの前で一帯に広がる火の海に茫然としたはず。一方で能登半島の地形的な問題もあって、発災直後は各種メディアからの報道だけでは現地の状況が把握できず、多くの人がもどかしい思いを抱いた。そうした状況のなか、輪島朝市通りの入口に支局を構える弊誌は東京から記者4名で現地入りし、現地の駐在記者1名と合流した。そこで目にしたのは一面に広がる焼け野原と憔悴しきった住民の顔だった。

朝市通りの焼損は300棟 焼失面積は5万8000平方メートル

■人的・建築物的被害に愕然となりつつ被害の拡大を懸念

被害の詳細はまだ明らかになっていない(執筆当時 1月21日時点)が、内閣府非常災害対策本部からは人的被害は死者232人、負傷者は1,009人。住家被害は全壊が、54棟、半壊は805棟、一部破損は8,741棟と報告された(2024年1月18日9時発表分)。住家被害がこれほど大きくなった要因は、重い屋根瓦と古い木造建築にもあったといわれている。周期1~2秒の強い揺れに全国平均87%(18年)を下回る耐震化率45%(輪島市)、51%(珠洲市)の木造構造が耐えられなかったと指摘する専門家も。その建物被害は「阪神・淡路大震災に匹敵する」とされている。また、石川県珠洲市、能登町、志賀町の3市町で、大きな津波による被害があり、合計約193ヘクタールの津波による浸水が確認された。とくに浸水範囲が広かった珠洲市では、浸水深が約4メートルに達し、地殻の大きな変動により潮位計の計測が不可能な状態となったとされている。

大きな揺れの後に起こった火災が輪島の朝市通りの姿を一変させた
高熱で曲がってしまった鉄骨が物語る酷さ

■輪島の観光と産業の象徴の喪失が落とす影

こうして災害の甚大さを受けて政府は機動的に財政支出するため2024年度予算案を変更し、予備費を1兆円規模に倍増した。さらに、1月11日には能登半島地震を激甚災害と特定非常災害に閣議決定、広範な復旧事業の国補助率を引き上げた。政府は災害対策本部を設置し、全国的な協力体制を整えているが、現時点(1月20日)では道路や港湾、上下水道などのインフラの復旧の見通しは立っていない。

これらの甚大な被害によって、名物の輪島朝市は壊滅し、その焼失面積は約5万800平方メートルになると国土交通省国土技術政策総合研究所は発表。さらに、約300棟が焼損したと推定した。当然、朝市通りに面している輪島塗の店舗や蔵元も営業再開は困難な状況にある。漁業の再開についても、港の隆起や施設の亀裂などによって現時点では見通しが立っていない。

この地震と火事で伝統工芸の輪島塗をはじめ、漁業、朝市の大半を喪失したことになる。輪島の主だった産業が失われた、被害甚大だ。帝国データバンクの調査では、能登地方に本社を置く企業は4,075社、従業員数は4.9万人、売上高の合計は1兆3,018億円におよぶという。企業活動が再開しつつあるとのことだが、中小企業が多く、〝ひとり親方”の輪島塗りの職人や個人営業の漁民が多い。今後のサプライチェーンへの影響が心配されている。

震災前と後での輪島・朝市通りの姿。被害地域へのアクセスが長く絶たれて、未だに手つかずな場所も散見される。

■支援のチカラと苦渋の決断の板挟み

一方で、石川、富山、福井、新潟の4県で被災者を受け入れる見通しが立ち、輪島市の坂口茂市長はホームページ上で「電気・水道などのライフラインに壊滅的な被害を受け、復旧には相当の時間がかかる見込みです。また、長引く避難所での生活環境は悪化する恐れがあります。このため、安全で快適に生活できる市外への2次避難をぜひお願いいたします」と訴える(1月20日時点)。が、2次避難をキッカケに人口の流出を心配する声もある。それでも、災害関連死を避けるためには苦渋の決断だったのだろう。